2014年12月2日火曜日

規制緩和は自己責任

今の日本は1970年代のイギリスに似ています。当時のイギリスは手厚い福祉政策と多すぎる国有企業のせいで、英国病と呼ばれるほど経済が衰退していました。国有企業は経営努力を怠ったため赤字で、法人税が高かったので民間企業が外国に本社を移してしまい、イギリスの税収が減って国の借金である国債残高だけが増えていました。そこに登場したのがマーガレット・サッチャー首相で、彼女は1979年から福祉の大幅削減と国有企業の民営化、さらに税制改革、財政支出の削減、規制撤廃などを行い国際競争力のあるイギリスを取り戻そうとしました。それでも2001年にブレア内閣が英国病の克服を宣言するまで実に22年もかかっています。実際サッチャーが首相を務めていた間は、イギリスの失業率が上がるなど効果より副作用の方が問題でした。これを日本と比較すると、手厚い福祉政策と国債頼みの財政、電気やガス、銀行といった競争のない企業が多いなど類似点がたくさんあります。サッチャーが英国民に自覚させた大事な事は「タダのランチはない」という事実です。手厚い福祉政策を維持するには多くの税金が必要で、法人はそれを嫌って他の国に移りイギリスの税収を減らしました。福祉を大幅に削り、法人減税を断行し、規制撤廃を行うには「自己責任」が前提です。つまり何でも税金で面倒をみる「大きな政府」ではなく、軍隊や警察といった最小限の行政サービスのみ税金でまかなう「小さな政府」への変身です。同じく日本の規制緩和にも「自己責任」という覚悟が大切です。規制が減るという事は自由に経済活動ができると同時に、利用者が自分の責任でサービスを選ばなければいけないという事です。保育園なら認可という制度をやめて民間企業に自由にやらせるという事です。質を重視して保育士の多い高価な保育園を選ぶか、それとも値段を重視して安い保育園を選ぶかは利用者に決める責任があります。こうした「自己責任」を受け入れるなら日本でも規制撤廃は可能でしょう。でも「お上に頼る」伝統のある日本では「小さな政府」は実現できそうもありません。規制緩和が日本で進まない本当の理由は、国民が「自己責任」で生きる覚悟を持っていないからです。成長産業を国に決めてもらうという発想そのものが「自己責任」から外れています。税金を減らしたければ政府の仕事を減らさなければなりません。

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