2015年12月26日土曜日

テレビよりもロボット

この朝日新聞のニュース[^1]を見て考えました。そこにあるグラフ1には「薄型テレビの国内出荷台数が2011年7月の『地デジ』移行を境に、急速に落ち込んだまま回復していない」との説明が付いています。でもこれは明らかに誤りです。このグラフが2009年以前のデータを表していないので、政府の統計から昔のデータ[^2]を調べました。すると2000年から2008年までのテレビの国内出荷台数は毎年950万台程度で、傾向としては漸減していた事が分かります。つまり2009年から2011年までの3年間が「地デジ」のせいで大幅に増えていたのです。ここ数年は年間600万台程度なので、本来あるべき台数に戻ったという事です。今の日本で必要なテレビの台数はこれだけなので、人口が増えない限り国内出荷台数は増えません。自分の主張に合う都合の良いデータだけ切り出して見せるのがマスコミの常套手段とはいえ、このニュースはいただけません。テレビが以前ほど売れないのは主に若者人口が減ったからで、2009年から2011年が異常だったのです。そこに「回復」する事などあり得ません。今の家電業界は「夢よもう一度」とばかりに4Kテレビに傾斜しています。規格を変えることで新たな需要を生み出すという手法に一定の効果がある事は確かです。でも今ある地デジ対応テレビをあえて買い換える理由にはならないので、4Kテレビは回収できない投資です。テレビでは利益が得られないと早く諦めて、お年寄りの話し相手になる会話ロボットや、身の回りの世話をしてくれる介護ロボットに投資する方が得策です。

^1: http://www.asahi.com/articles/ASHDQ3HS0HDQUEHF004.html
^2: http://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/bunseki/pdf/h22/h4a1009j1.pdf

2015年12月16日水曜日

年金体系

実はアメリカの年金は日本ほど手厚くありません。例えば労働者全員が加入する社会保障(Social Security)という名前の年金の給付額は、ほぼ日本の国民年金の給付額と同じです。また一部の古い会社を除くと厚生年金に相当するものがないので、他に何もしなければ毎月数万円しかもらえません。そこでほとんどの労働者は個人年金、いわゆる401kプランを利用しています。これは収入の一部を天引きして自分の個人年金口座に移し、自分の指定するファンド(株や国債)で運用するものです。また自分で不動産や株などに投資して老後の資金を作るのも常識です。401kプランの利点は現役のうちに所得税の節税ができることで、老後に資金を引き出す時には利益に税金がかかるものの、その頃には年間の収入額そのものが低いので税率も低くなります。また転職しても自分の個人年金を持ち運べるので、今の会社に縛られることはありません。もしアメリカの老人にお金持ちのイメージがあるとすれば、それはこうした個人年金や不動産への投資の結果です。実際には貧しい老人もいて、たまに70歳を過ぎてもマクドナルドで働く人を見かけます。逆に言うと年齢を理由に人を不採用にはできないので、働ける人はずっと働けるのがアメリカです。日本の国民年金には税金から毎年約10兆円を補填しているので、日本も働ける人はずっと働けるようにしないと労働人口が減ってしまい、逆に老人費用だけが増える事になります。

2015年12月5日土曜日

和食の菜食

ここシリコン・バレーには菜食主義の人(ベジタリアン)がたくさんいます。一口に菜食主義と言っても、その理由は宗教的なものから健康オタク的なものまで色々です。ところがそういう人たちが日本に旅行に行って困るのが、日本にはベジタリアン向けの食事がないという問題です。魚を含めすべての動物を食べないのが菜食主義の基本なので、タマゴもだめならカツオ出汁の味噌汁も食べられません。お寿司ならカッパ巻きのみ、天ぷらも野菜を塩で食べるだけ、ラーメンは全滅です。知り合いのインド人は、せっかく日本にいったのにインド料理屋で出すベジタリアン向けカレーしか食べられなかったと嘆いていました。海外の人を日本に呼び込むには、もっと菜食主義向けの献立を作る必要があります。和食は出汁が味の決め手なので、板前にとって菜食はイスラム教向けのハラール食より難しい話です。でも頭を使ってぜひ美味しい和食の菜食を実現してほしいと願います。

2015年12月2日水曜日

介護難民

東京はこれから介護難民が増えるというので、老後は地方でという旗を振っている人がいます。その一方で老後は自宅で家族が面倒を見てくれと政府は言っています。すると老人は子供を含めて家族全員で地方に移住しなければなりません。でも子供には仕事や学校があって家族はそう簡単に地方に移住できません。つまり「老後は地方」と「自宅で介護」は同時に成り立ちません。ではアメリカはどうしてるのでしょう。筆者の知る範囲では、自宅で介護という人は少数派です。共働きが多い社会なので、介護付きの老人ホームに親を入れる人が普通です。そのお金は親の家を売って作ります。老人ホームは遠くても車で数時間ぐらいの所に選び、毎週一回は子供の誰かが面会に行きます。子供世代は都市に住んで働き、自分の家を買ったり自分の子供を学校に行かせたりします。子供のいない老人だと思い切って隣の州など物価が安い場所に移る人もいます。もちろん老人が日本ほど長生きしないという点も見逃せません。