2016年12月23日金曜日

自動運転と高速道路

グーグルの地元マウンテン・ビュー市ではグーグルの自動運転の車をよく見かけます。町中を走っているこの車には必ず実験を担当する人間が乗っていて、いろいろなデータを集めているそうです。面白いことに、この自動運転の車が近くの高速道路を走っているのは見たことがありません。つまりグーグルの自動運転車はまだ高速道路は走れないようです。先頃グーグルが自動運転のタクシーを始めると発表しました。これは町中を走るタクシーという事でしょうか。混雑した高速道路を走るのは確かに自動運転にとって相当難しいと思います。日本では日産が高速道路を走る半自動運転を始めるということなので、日本とアメリカの違いとして面白いと思います。高速道路を走れない自動運転車だとタクシーとしてあまり役立たないのではと気になります。グーグルは完全自動運転を目指しているので、日産とは目指す方向が違うのでしょう。

2016年12月17日土曜日

AIに何を教えるのか

AIは学習する事で知識を増やします。では何をAIに教えるのでしょう。先ごろあったマイクロソフトの事件を覚えていますか。チャットするAIのテイは利用者との会話から知識を増やします。ところが悪意をもった利用者がテイに人種差別的な意見を大量に教えたため、テイはそれを学習して人種差別的なツイートを始めるようになりました。これに気がついたマイクロソフトはすぐテイをインターネットから切り離したので、その後このAIがどうなったかは知りません。でもこの事件から得られる教訓は、AIは素直な子供のように良いことも悪いこともすべて同じように学習するという点です。するとAIに何を教えるのかというのが大切な問いになってきます。たとえば宗教はどうでしょう。AIに宗教を教えるべきですか。教えるとしたらどの宗教ですか。戦争はいけない事ですか。それなら今なぜ中東に戦争があるのでしょう。こうした疑問には答えが複数あり、唯一の正解はありません。学習型AIには何を教えたらいいでしょうか。

2016年12月13日火曜日

人工知能についての誤解その3

話題の機械学習には報酬が必要です。囲碁やチェスならゲームの勝ち負けが簡単に判断できるので、勝てば報酬がもらえる(勝った方のプレーヤーの経験値が増える)という形で機械学習を行います。この場合機械に何を報酬として与えるかは学習結果に大きく影響するので、人間に役立つ人工知能を作るには報酬の条件を適切に決める必要があります。その際には善悪の判断も必要で、報酬の条件を間違えると人間に有害な人工知能ができてしまいます。人工知能が進むと人間の仕事がなくなるというのは誤解で、むしろ人工知能を使って何をするかを考える仕事や、人工知能に適切な条件を与えて学習させる教師のような仕事が生まれます。かつてパソコンがソロバンに取って代わったように、仕事に使う道具は常に変化しています。人工知能はあくまでも道具なので、その使い方を学べば人間の仕事がなくなる事はありません。

2016年12月10日土曜日

人工知能についての誤解その2

囲碁の世界で人工知能が人間に勝ったというニュースがありました。チェスの世界ではもっと前から人工知能が人間に勝っています。こうしたゲームは勝敗に関わる情報がプレーヤーに完全に見えているので、機械学習を駆使して、人間より経験豊富な人工知能プレーヤーを養成することができます。デジタル化されたすべての定石を覚え、さらに人工知能プレーヤー同士を高速度で対戦させれば、人間の数千倍の経験をもつ人工知能プレーヤーを作る事は今でも可能です。つまりこうしたゲームで人工知能に人間が勝つ見込みは今後ありません。でもそれはゲームという特殊な状況だけに限定されます。「勝敗に関わる情報がプレーヤーに完全に見えている」という状況は実社会の状況とは違います。例えば車の自動運転をする人工知能があるとします。この人工知能は安全で便利な運転に必要なすべての情報を持っているでしょうか。住宅地では子供が車の影から飛び出すかもしれません。高速道路では逆行する車があるかもしれません。不完全な情報のもとで決断を下す以上、常に最上の決断を下すことは人工知能にも不可能です。人工知能にできる事は、住宅地ではゆっくり走るとか、高速道路で逆行する車を見つけたらすぐ路肩に止まるぐらいです。実社会のすべての状況変化に適応できる人工知能はありません。

2016年12月6日火曜日

人工知能についての誤解その1

レイ・カーツワイルという未来学者がその著書「シンギュラリティは近い」という本で紹介した「シンギュラリティ」という言葉は、ひとつのコンピュータが持つ計算能力がひとりの人間の脳をシミュレーションするのに十分なレベルに達する状況を表します。ここにはまず脳をコンピュータがシミュレーションできるという仮定があり、次にその方法を人間が知っているという仮定があります。もしこのふたつの仮定が成立する場合、2045年にコンピュータ技術がシンギュラリティに到達するというのがカーツワイルの予測です。これに対してよくある誤解は、2045年には人工知能が進歩して人間の知能を超えるというものです。今の人工知能は脳のシミュレーションではありませんし、そもそも脳を100%シミュレーションする方法は分かっていません。たとえ分かったとしても、空っぽの脳を作れるだけです。計算能力だけでは人間を超える知能はできません。

2016年12月1日木曜日

国債は将来世代からの借金

世の中にはおめでたい人がいます。国債は将来世代からの借金だという事を忘れて、日銀が国債を全部買い取れば良いという人がいます。日銀がお札を大量に刷って日本の国債を全部買い取ると、どんな事が起きるでしょうか。日本の国債残高は既に1000兆円を超えています。これは今のお札の発行残高とほぼ同じです。つまり日銀が日本の国債を全部買うためには、世の中に出回っているお札の量を倍にしないといけません。これはつまり短期間に円の価値を半分にするという事ですから、1ドルが200円を超える円安を招きます。輸入物価が跳ね上がり、とんでもないインフレを引き起こします。お金の価値が半減するので、タンス預金もその価値が半減します。輸出企業は売り上げをドルで受け取るので、日本円に換算すると売り上げは倍になります。でも円の価値が半減しているので、日本でそのお金を使う限りプラス・マイナス・ゼロです。もともと国債は将来世代からの借金なので、いくら増やしても今を生きている人に不便はありません。将来世代が北海道夕張市のような緊縮財政を強いられるという意味で、国債は世代間の争いとなっています。