2015年12月26日土曜日

テレビよりもロボット

この朝日新聞のニュース[^1]を見て考えました。そこにあるグラフ1には「薄型テレビの国内出荷台数が2011年7月の『地デジ』移行を境に、急速に落ち込んだまま回復していない」との説明が付いています。でもこれは明らかに誤りです。このグラフが2009年以前のデータを表していないので、政府の統計から昔のデータ[^2]を調べました。すると2000年から2008年までのテレビの国内出荷台数は毎年950万台程度で、傾向としては漸減していた事が分かります。つまり2009年から2011年までの3年間が「地デジ」のせいで大幅に増えていたのです。ここ数年は年間600万台程度なので、本来あるべき台数に戻ったという事です。今の日本で必要なテレビの台数はこれだけなので、人口が増えない限り国内出荷台数は増えません。自分の主張に合う都合の良いデータだけ切り出して見せるのがマスコミの常套手段とはいえ、このニュースはいただけません。テレビが以前ほど売れないのは主に若者人口が減ったからで、2009年から2011年が異常だったのです。そこに「回復」する事などあり得ません。今の家電業界は「夢よもう一度」とばかりに4Kテレビに傾斜しています。規格を変えることで新たな需要を生み出すという手法に一定の効果がある事は確かです。でも今ある地デジ対応テレビをあえて買い換える理由にはならないので、4Kテレビは回収できない投資です。テレビでは利益が得られないと早く諦めて、お年寄りの話し相手になる会話ロボットや、身の回りの世話をしてくれる介護ロボットに投資する方が得策です。

^1: http://www.asahi.com/articles/ASHDQ3HS0HDQUEHF004.html
^2: http://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/bunseki/pdf/h22/h4a1009j1.pdf

2015年12月16日水曜日

年金体系

実はアメリカの年金は日本ほど手厚くありません。例えば労働者全員が加入する社会保障(Social Security)という名前の年金の給付額は、ほぼ日本の国民年金の給付額と同じです。また一部の古い会社を除くと厚生年金に相当するものがないので、他に何もしなければ毎月数万円しかもらえません。そこでほとんどの労働者は個人年金、いわゆる401kプランを利用しています。これは収入の一部を天引きして自分の個人年金口座に移し、自分の指定するファンド(株や国債)で運用するものです。また自分で不動産や株などに投資して老後の資金を作るのも常識です。401kプランの利点は現役のうちに所得税の節税ができることで、老後に資金を引き出す時には利益に税金がかかるものの、その頃には年間の収入額そのものが低いので税率も低くなります。また転職しても自分の個人年金を持ち運べるので、今の会社に縛られることはありません。もしアメリカの老人にお金持ちのイメージがあるとすれば、それはこうした個人年金や不動産への投資の結果です。実際には貧しい老人もいて、たまに70歳を過ぎてもマクドナルドで働く人を見かけます。逆に言うと年齢を理由に人を不採用にはできないので、働ける人はずっと働けるのがアメリカです。日本の国民年金には税金から毎年約10兆円を補填しているので、日本も働ける人はずっと働けるようにしないと労働人口が減ってしまい、逆に老人費用だけが増える事になります。

2015年12月5日土曜日

和食の菜食

ここシリコン・バレーには菜食主義の人(ベジタリアン)がたくさんいます。一口に菜食主義と言っても、その理由は宗教的なものから健康オタク的なものまで色々です。ところがそういう人たちが日本に旅行に行って困るのが、日本にはベジタリアン向けの食事がないという問題です。魚を含めすべての動物を食べないのが菜食主義の基本なので、タマゴもだめならカツオ出汁の味噌汁も食べられません。お寿司ならカッパ巻きのみ、天ぷらも野菜を塩で食べるだけ、ラーメンは全滅です。知り合いのインド人は、せっかく日本にいったのにインド料理屋で出すベジタリアン向けカレーしか食べられなかったと嘆いていました。海外の人を日本に呼び込むには、もっと菜食主義向けの献立を作る必要があります。和食は出汁が味の決め手なので、板前にとって菜食はイスラム教向けのハラール食より難しい話です。でも頭を使ってぜひ美味しい和食の菜食を実現してほしいと願います。

2015年12月2日水曜日

介護難民

東京はこれから介護難民が増えるというので、老後は地方でという旗を振っている人がいます。その一方で老後は自宅で家族が面倒を見てくれと政府は言っています。すると老人は子供を含めて家族全員で地方に移住しなければなりません。でも子供には仕事や学校があって家族はそう簡単に地方に移住できません。つまり「老後は地方」と「自宅で介護」は同時に成り立ちません。ではアメリカはどうしてるのでしょう。筆者の知る範囲では、自宅で介護という人は少数派です。共働きが多い社会なので、介護付きの老人ホームに親を入れる人が普通です。そのお金は親の家を売って作ります。老人ホームは遠くても車で数時間ぐらいの所に選び、毎週一回は子供の誰かが面会に行きます。子供世代は都市に住んで働き、自分の家を買ったり自分の子供を学校に行かせたりします。子供のいない老人だと思い切って隣の州など物価が安い場所に移る人もいます。もちろん老人が日本ほど長生きしないという点も見逃せません。

2015年11月14日土曜日

外枠文化

島国が生んだ日本文化のひとつが外枠文化です。これはまず外枠、つまり外形的条件を決めると中をどう埋めるかに集中でき、最後には究極の箱物を作るという日本人の性質を表します。例を挙げると盆栽、軽自動車、携帯電話、弁当、100円ショップなどです。盆栽は器の大きさに上限があります。軽自動車には車体とエンジンに大きさの制限があり、携帯電話には携帯する上での制限があります。弁当もほとんどが四角形の入れ物で、持ち運びできる大きさです。100円ショップの制限は値段にあり、商品は100円でなければなりません。こうした制限があると中をどう埋めるかに夢中になるのが日本人です。ところがこうした制限がなく自由に発想していいとなると、おおかたの日本人は困ってしまいます。努力を集中させるポイントが分からないので、どこから始めて良いのかも分かりません。日本には外形的条件のかわりになる宗教や哲学がなく、外枠文化を超えることができません。「周りに合わせて生きる」という日本人の常識そのものが外枠文化と言えるでしょう。良くも悪くも外枠文化は日本にどっしりと根を張っています。

2015年11月1日日曜日

正社員の限界

日本独自の働き方である「正社員」の賞味期限が切れようとしています。戦時体制を源とする正社員制度は、労働者から職業選択の自由を奪い、過度な長時間労働という形で少子化を加速しました。一方、非正規労働者が全体の4割という現状では、結婚に必要な賃金が得られず結婚できない若者が増えています。個々の企業が非正規労働者を使ってコスト削減に励むと、国民の収入が減って国全体の活力が落ちるという「部分最適・全体不適」が起きています。これは日本の法律が悪いのであって、法律を変えて「部分不適・全体最適」を実現しなければなりません。そのためには「就職時の年齢差別と年功序列制度の禁止」および「正社員制度と1年を超える非正規労働の禁止」のふたつが必要です。またこれに付随して「人材の流動化」を加速するために「手切れ金による解雇」を「正社員制度の禁止」と引き替えに認めます。「正社員制度の禁止」とはどういうことかと言うと、すべての社員は仕事や場所が限定された「限定社員」となり、会社の命令なら何でもやるという「正社員」は禁止するという事です。そのかわり会社はいつでも従業員を手切れ金で解雇できるし、従業員はいつでも会社を無条件で辞められます。こうすることで従業員を大切にしない会社は人材を引き留めておく事ができなくなり、ブラック企業は淘汰されます。この根底にあるのは、「人に仕事を付ける」のではなく「仕事に人を付ける」ほうが労働者にとって有利だという考え方で、これは日本以外のほとんどすべての国で行われている働き方です。国民は教育を通じてプロの職業人になり、自分のキャリアは自分で作るという責任を持ちます。会社に人生を預けるのではなく、国が教育や制度を通じて国民の生活を手助けするという当たり前の社会を目指します。人材の流動化は新しい産業を育てるために必要で、これができなければ日本は今の生活水準を維持できません。労働人口の減少を移民で解決しようとすると、治安の低下や社会コストの上昇という問題を起こします。それに労働条件の悪い日本には、海外から一流の人材は入ってきません。今ここで法律を変えて少子化を止めないと、十年以内に巨額の財政赤字が日本経済を潰します。

2015年10月29日木曜日

人生は実験の繰り返し

学生にとって世の中はすべて決まっていて、教科書に書いてない物は存在しないと考えられます。ところが社会人になって3年もすると、この見方の間違いに気付きます。世の中にある物はすべて変える事が可能で、教科書に書いてある物事は世の中のごく一部でしかなく、しかも間違っているものも多いという事実が見えてきます。人生とは実験の繰り返しです。あれをやってみる、これをやってみる、だめならやり方を変えてみる、目標を変えてみる、これはすべて実験です。学生なら勉強しながら色々な事をやってみて、どれが自分に合うか試すことができます。世の中は変えられる、そして世の中をより良いものの変えるのが人の仕事だと教えるのがアメリカです。アメリカの社会そのものがこうした実験の場となっていて、とりあえず何かやってみてダメなら変えれば良いというのが基本の考え方です。

2015年10月22日木曜日

人口減少の壁

アベノミクスが円安をもたらし、輸入物価の上昇と引き替えに輸出企業の利益と株価を押し上げた事は確かです。でも人口が減る国では時間とともに需要が減るので、そのままでは国内の売り上げは増えません。人口減少を放置したままインフレを起こそうとしても、人々はそんなに簡単には騙されません。国債残高は際限なく増えるし、税金も間違いなく増えます。この状況で「この先景気が良くなると思って支出を増やす」人が日本のどこにいますか。肝心の実質賃金が上がらないと支出は増えません。むしろ以前の円高のまま海外企業の買収が進めば良かったのに、その道も閉ざされました。拡大する市場は日本の外にあるので、国内市場に頼っていてはじり貧です。この状況で日本の若者に残された防衛策は、自分を教育して高い収入を得る仕事に就く事です。この先コンピュータが中間層の仕事を奪うので、中途半端な教育レベルだと失職します。天然資源の少ない日本では、勤勉な労働人口こそが本当の資源なのです。

2015年10月2日金曜日

人工知能の限界

筆者もかつて大学では人工知能を卒論のテーマにしたし、仕事では機械学習を使った評価システムの性能テストをしたことがあります。機械学習は昔はニューラル・ネットと言ってました。比較的少ない入力から人間にとって役立つ出力を得る関数を、大量の学習によって生成するのが目的です。今はコンピュータの性能が上がってメモリーも大量に使えるので、学習に使う大量のデータさえ手に入ればかなり役立つ機械学習が可能です。例えばクレジットカードの不正利用を見抜くとか、売れ筋商品の適正在庫を求めるといった「達人の勘」レベルまで来ています。でもこれは使う状況を限定しているから可能なのであって、人間の判断が要らないという意味ではありません。そもそも何が人間の役に立つかどうかは人間が判断しなければなりません。機械学習は今やシリコン・バレーでも一大ブームになっていて、そのエンジニアはどの会社にも引っ張りだこです。でもそんな人工知能にもそれなりの限界はあります。それは状況を限定しないと使えないという問題です。刻々と変わる状況に応じて的確な判断を下す事は今の人工知能にはできません。

2015年9月19日土曜日

福島第一原発の汚染雨水

福島第一原発の汚染雨水は、港の外に流れても中に流れてもその先は結局同じ海です。「放射性物質の流出を防ぐ水中カーテンで港湾外と仕切られた港湾内に流す」というのは誤りで、「放射性物質の流出を防ぐ水中カーテン」など存在しません。潮の満ち引きに応じて港の海水は外と出入りしているので、水中カーテンでは放射性物質の流出は防げません。必要なのは汚染した雨水をタンクに集めて浄化してから海に流す事であって、浄化せずに海に流すことではありません。ちなみにスリーマイル島原発の事故では、汚染水を浄化したあと蒸発させて大気中に散らしました。汚染水中のトリチウムは浄化できないので、苦肉の策でした。

2015年9月8日火曜日

自己中の日本

「自分さえ良ければいい」というのは人間の本心です。でもこれだけだと人類は滅亡します。人間は社会的な動物で、他の人に頼らないと生きていけません。だから自己中の人は嫌われます。ところが今の日本では国民全員が自己中になっています。後の世代に国債という巨額の借金を先送りして、自分だけ楽しく生きられればいいという考え方です。難民問題も同じです。高度な仕事に就く移民なら受け入れるけど、難民は拒否するというのが日本の方針です。例えば2014年度に日本が難民として認定した人数は、申請した5000人中わずか11人です。そのうえ日本では二重国籍が許されないので、もともと移民の数も限られています。日本人だけ楽しく生きられればいいという考え方をするなら鎖国が必要で、外国と貿易を通じて発展してきた日本には、もはや鎖国という選択肢はありません。つまり日本人だけ楽しく生きられればいいという考え方は、今の国際社会において通用しません。アフリカや中東から大量の難民が欧州に押し寄せている現在、日本はそうした難民を何人受け入れるのかと問われています。こうした難民を受け入れるにはお金がかかるし、治安が悪化する心配もあります。この問題に万人が納得する正解はありません。

2015年9月1日火曜日

どうにかしろ

日本で働いていた時の経験です。無能な上司ほど「どうにかしろ」と言う傾向があります。具体的な指示ができないために、「どうにかしろ」という人がいました。この「どうにかしろ」は上司が言ってはいけない言葉のひとつです。これには隠れた枕詞があって、「(方法は何でもいいから)どうにかしろ」と言う上司がいます。こう言われた部下はどうしますか。会社なら法律違反を承知で決算の数字をごまかすのがオチです。「どうしたらいいと思うの」と尋ねる上司はさらに狡猾です。自分にアイデアがないことを隠したまま、「部下に考えさせる」という建前を使います。こういう人は正直に「自分もどうしたらいいか分からないから、一緒に考えよう」とは言いません。部下としてはアイデアがないから上司に「どうしたらいいでしょうか」と尋ねているのに、「どうしたらいいと思うの」と質問で返されると返事に困ります。心の中では(それが分かったら尋ねていないって)と思っていても、それを口にだすと上司が怒るので黙るしか手がありません。責任回避のために曖昧な指示を出す上司と、部下の質問に同じ質問で答える上司、どちらも無能な人の特徴です。シリコン・バレーでこれをやったら部下はすぐ他の会社に逃げます。

2015年8月22日土曜日

たったの2000億円

2020年の東京オリンピックに向けて建設中の新東京国立競技場は、その建設費が当初の見積もりより2000億円高くなるのが問題で計画が白紙に戻されました。日本では年金に税金を年間10兆円も投入しているので、その1%を二年間だけ年金受給者に我慢してもらえば2000億円になります。国民年金の受給額の約半分が税金から出ているので、国民年金の受給額でいえば年間0・5%にあたります。せっかく画期的なデザインを選んだのに、たったの2000億円をケチるために情けないデザインの競技場になるとしたら残念です。言いかえると、年金に流用している年間10兆円の税金はそれほど大きな金額だということです。

2015年8月15日土曜日

プレミアム商品券の愚

去年11月の「アベノミクス失敗」ブログで商品券の形で税金を浪費するのは止めて欲しいと書きました。でも日本の各自治体ではプレミアム商品券が大流行のようで、これほどアイデアのない人たちに今の地方政治を任しているとは情けない限りです。税金でプレミアムを付けた商品券を出しても何も変わりません。その税金は貯金に回るだけで、消費の先取りが終わると元の木阿弥です。小渕恵三首相もむかし税金で一人2万円の商品券を出しました。その結果この政策には意味が無いと数字で証明されたのに、懲りずにまたやるのは愚かとしか言いようがありません。自分が払う税金じゃないから気にしないのでしょうか。まとめて給付型奨学金にした方が日本の将来には良かったのに本当に残念です。

2015年8月13日木曜日

IT後進国

これは日本の事です。例えば医者のカルテ。アメリカだとその地域を担当する医者のネットワークがあって、自分の過去の病歴がどの医者にいっても一目瞭然です。今どんな薬を処方されているかも分かるし、前回どの医者にかかって、どんな治療をしたかも医者のパソコンで分かります。日本の国民健康保険は赤字なのに、こうした合理化ができないのはなぜでしょうか。別の例で言えば、税金の申告、自動車免許の更新、株主としての不在者投票も簡単にウェブでできます。時間の節約にもなるし、電車賃もかかりません。ネットを使えば世の中の無駄を減らせるのに、なぜやらないのかいつも不思議です。選挙だってもうネットでできるのに、いつまでたってもやらないのは理解できません。来年からマイナンバー制度が始まるので、これを機会に海外からでもネットで投票できるようにしてほしいものです。

2015年8月1日土曜日

不毛な酒税

筆者はビール好きです。それもエール系の凝ったビールが好きです。アメリカだとビールは種類が多く、価格も安いので平均して小瓶を毎日一本飲んでいます。日本の酒税はビールにやたら高い税金をかけていて、なんと値段のほぼ半分が税金です。なんでも日露戦争の時に贅沢品であったビールに高い税金をかけたとか。わざわざ冷やして飲むなど、ビールはかつて富裕層向けの飲み物だったのですね。それから100年あまり経ってビールは庶民のささやかな楽しみとなりました。それでも酒税はこのところ毎年税収が下がっています。お酒を飲む人が減ったことと、税金の安い第3のビールが増えていることが原因です。ビールだけに偏った税金をかけるからこうしたひずみが起きます。一方でビール業界の海外進出は遅れており、酒税のかからないビールの輸出は伸びていません。本来お酒は嗜好品ですから税金をかけるのは分かります。そこでお酒の種類ではなく、アルコールの量に応じた税金をかけることを提案します。つまりアルコール分6%のビールには6%の酒税をかけ、アルコール分15%の清酒には15%の酒税をかけます。これは合理的な税金のかけ方です。こうすることで日本のビール業界は無駄に税金逃れのビールもどきを造らずに済み、そのかわり海外マーケットへの積極的な投資ができます。

2015年7月24日金曜日

新聞記事の違い

日本とアメリカの新聞記事には無視できない違いがあります。どちらも取材した内容を記事にするのは同じです。ところが日本だと誰かが発表したモノを右から左にそのまま報道します。そのモノに対する第三者の意見はあまり報道しません。たとえば政府が貿易赤字について数字を発表するとしましょう。日本の記事は政府の発表をそのまま載せます。ところがアメリカだとその発表について肯定的な意見と否定的な意見を直接利害関係のない専門家、たとえば大学教授とか民間のエコノミストに取材して、発表に追加して記事にします。かならず利害関係のない専門家ふたりから、肯定的な意見と否定的な意見を取材して追加するので、記事自体は中立という建前です。でもそうした意見のおかげで読者は発表の裏にあるものを知ることができます。政府の発表を右から左に流すだけならビデオで撮ってYouTubeに載せれば十分です。このインターネットの時代にわざわざお金を払って記事を読むのは、その記事に何らかの付加価値があるからです。もとの情報に肯定的意見と否定的意見を取材して加えると、情報を頂点とする三角形の記事ができます。肯定的意見と否定的意見を付加することで、発表というひとつの点情報に広さが加わります。これは記事の表面的な中立性を重視するか、それとも記事を通じて読者へ届ける判断材料を重視するかの違いです。もともと報道する記事を取捨選択する時点でどのみち中立性は失われるので、新聞記事に完全な中立性はありません。

2015年7月12日日曜日

公園と公立学校

カリフォルニア州だと公園と公立学校が隣接している事が多く、その理由は公立学校が公園を学校のグラウンドとして使うからです。法律により公立学校の塀にはカギをかけないので、学校と公園が一体化することで平日は学校の体育に公園を使い、休日は公園を地域の人の憩いの場とするという使い分けが出来ています。日本だと学校のグランドは休日に閉めていることが多いので、広い校庭を有効利用できていない状況があります。ただしアメリカは自己責任の国ですから、公園を使うのも自分の責任です。公園でケガをしても明らかに施設の不備でないかぎり行政の責任は問われません。また公立学校は教室にカギをかけるので、校庭はいわば公園の延長上にあります。トイレも公園にだれでも使えるものがあるので、学校のトイレは休日には閉まっています。こうした法律上の違いがあるので、日本で校庭を休日に公園として使うのはかなり難しいでしょう。ただ都会の子供は運動不足のため運動能力が毎年下がっています。マンションに住んだら簡単に外に遊びに行く事もかないません。都会の子供の運動能力を上げるには、公立学校の校庭を使って週末に親が子供とスポーツをすると良いと思います。

2015年6月30日火曜日

日本の実質賃金は25か月連続減

5月の政府統計が出ました。確定値で実質賃金は25か月連続減[^1]というのは予想通りです。4月の速報値では0・1%の増加だったのに確定値で0・1%の減少となった理由は、速報値が主に正社員の給与データを使っているのに対して、確定値には非正規社員の給与データを含むからです。つまり正社員と非正規との給与格差は一段と進み、全体としては実質賃金の減少となっています。ほとんどの会社で賃上げした後の数値なので、実質給与が減っている現状では物価が上がる可能性は一段と下がりました。日銀がさらに追加緩和をしてもこの構図は変わらないでしょう。日本は韓国や中国、台湾、ベトナム、マレーシア、インドなどとの経済競争に巻き込まれており、賃金の2極分化はますます進みます。他の国で出来る仕事は日本でやる必要はないので、日本はより高い賃金が得られる仕事をする人間を増やさなければなりません。つまりもっと頭を使う仕事を増やすというのが正しい方向です。非正規社員を増やしても国の平均値は下がる一方です。このままでは人口が減る日本に明るい未来はありません。老人の年金は減額して若者に税金を使い、国民の教育に投資するべき時です。

^1: http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PA04P20150630

2015年6月27日土曜日

革新を阻むもの

シリコン・バレーの会社を訪問して、その会社の従業員のくだけた服装やら奇抜な事務所のデザインに感心して、「なるほど仕事でスーツをやめて事務所を変えれば革新が生まれるのか」と誤解する人がたくさんいます。確かにシリコン・バレーには技術系の会社が多く、そうした会社では優秀な若者に働いてもらうため奇抜な事務所のデザインを採用しています。服装だってもともと技術系だから顧客に会うことも少ないので、普段着で十分です。でも肝心な点は若者が革新を生むという事です。失敗しても失う物が何もないからこそ、革新ができます。シリコン・バレーのHP社に15年勤めていた筆者は、たくさんの革新的なアイデアが保守的な中間管理職によって葬り去られるのを見てきました。失敗したら失う物がたくさんある中年の大人にとって、若者が生み出す革新的なアイデアは厄介ものでしかありません。だから革新を生み出すには金持ちが若者に投資しなければなりません。これはハイリスク・ハイリターンの投資なので、お金に余裕がある金持ちにしかできません。日本にはそうしたお金持ちがいないので、若者が持つ革新的なアイデアを実現できません。シリコン・バレーに来たら、服装やら事務所のデザインといったすぐ目に付く部分だけでなく、日米の労働形態の違いや「本当のお金持ち」の桁違いに大きい家なども見て欲しいと思います。日本でマネできる部分とできない部分がある事に気がつかないと、本質を見誤ることになります。日本の革新を阻むもの、それは日本の会社にいる中間管理職です。

2015年6月18日木曜日

首都圏も人口減少

2015年をピークに首都圏でも人口が減る[^1]そうです。首都圏というと山梨県を含む関東の1都7県を指すので、東京都の人口が増えて他の県の人口が減れば当然そうなります。日本全体の流れとしては今後いっそう人口減少に進むので、それにつれて消費市場も減少します。そこで海外からの観光客を増やして国内で爆買いしてもらえば、市場の減少を補ってもらうことは可能です。でも観光客が訪れる場所には偏りがあり、日本全国まんべんなく旅行してもらえるわけではありません。それに観光には市場の減少を上回って消費を拡大する力はありません。市場の減少はデフレをもたらすので、首都圏でもインフレがデフレに変わる可能性があります。日銀の量的緩和が日本政府の最後の悪あがきだったと歴史に記される日も遠くはありません。日本に本当に必要なのは人口を増やす政策です。この当たり前の結論から目を背け続ける限り日本は衰退します。それに移民では解決策になりません。老人に税金を使うのではなく、若者に税金を使わないと人口は増えません。年間10兆円もの税金を年金に流用するのは言語道断です。

^1: http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB15HL2_W5A610C1MM0000/

2015年6月4日木曜日

コミュニティ・カレッジ

日本の短大に相当するのがアメリカのコミュニティ・カレッジです。でも日本と違うのは、コミュニティ・カレッジが学費の安い公立学校だという事と、職業訓練に重心を置いているという事です。歯科衛生士になるコースやエステティシャンになるコースなどもあります。普通に教養科目を2年間取ったトップの学生が、そのまま州立大学の3年生に入れる制度もあります。コミュニティ・カレッジと一般の大学との間には明らかに棲み分けがあり、相互補完的な関係になっています。高校を出て遠くの職業専門学校に行くかわりに、近くのコミュニティ・カレッジに進む人も少なくありません。それに大きな都市だと複数のコミュニティ・カレッジがあります。失職した大人がコミュニティ・カレッジで別の仕事を学ぶのもよくあるケースです。こうした税金の使い方ならダメな企業に出す補助金よりもお金が生きます。

2015年5月23日土曜日

GDP

日銀による円の増刷と国債の大量買い取りはセオリー通りに円安を生みました。その結果輸入物価が上がり消費を抑えています。円安は輸出企業に自動的に増収をもたらしたので、国民全員からお金を集めて輸出企業に配ったのと同じ効果があります。ところが幸い原油の値段が下がったので、電気代は為替レートほどには上がっていません。今の日本は貿易赤字なので、円安は日本全体で見れば損となります。賃金の上昇が物価の上昇を上回らないと消費は増えません。消費が増えないと税収も増えないので、大量に買い取った国債が次の世代に大きな借金として残ります。正社員の賃金が上がるだけでなく、派遣社員や非正規雇用の賃金も上がらないとGDPは増えません。名目賃金だけでなく、それと物価との差である実質賃金がどれだけ増えるかが今後の課題です。年間80兆円ものお札を刷って市場に供給したのに、そのお金が土地や株式への投資に回るだけでは賃金は増えません。

2015年5月16日土曜日

ISEF

今年のISEFの勝者[^1]が決まりました。プロセッサで有名なインテル社がスポンサーとなって毎年アメリカで行われるこのコンテストには「インテル国際学生科学技術フェア」という翻訳が当てられています。ところがこれは誤訳です。もとは「Intel International Science and Engineering Fair」なので、「インテル国際科学工学フェア」が正解です。日本の学校にはサイエンス・フェアという行事がないので「学生」を付けて対象を明示するのは良いとしても、エンジニアリングを技術と訳してはいけません。技術はTechnologyです。日本語の科学技術はSciense and Technologyです。エンジニアリングとテクノロジーを両方とも技術と訳すのは大間違いです。では工学と技術の違いは何でしょう。ざっくり言うと技術とは物作りなどの方法です。高度な技術が必要な物作りをする産業をハイテク産業と言います。インテル社はその筆頭です。そうした技術はおおむね特許に守られるか企業秘密として会社にとどまります。ところが工学は技術だけでなくもっと他の物を含みます。物作りだけでなく、すでに作ったものをどう利用し維持するかまで含みます。工学は大学で学ぶことができ、その知識は教科書を通じて公開されています。つまり枝葉の話が技術でその上位にあるのが工学です。エンジニアリングとテクノロジーを区別しないと、なぜ大学にあるのが工学部なのか分かりません。技術を教えるのは職業学校の仕事です。

^1: http://www.asahi.com/articles/ASH5J5JT9H5JULBJ00B.html

2015年5月13日水曜日

イルカ問題の解決策

日本のイルカ漁は欧米の人々には理解不能です。前に書いたようにイルカは海外の人々にとって犬や猫と同じ存在です。日本で犬を捕まえて食べる人がいないように、ごく一部の国を除くと欧米にはイルカを捕まえて食べる人はいません。イルカは鯨と同じほ乳類で賢く、芸ができるので水族館の人気者になっています。マサの考える解決策は、イルカ漁のかわりにイルカを中心にした観光で食べていくことです。もちろんこれは部外者の無責任な発言です。でもイルカ漁を理屈で正当化しても、欧米人が抱く感情的な問題の答えにはなりません。イルカと共存する道を選ぶ方が日本にとって国際的に有利だとマサは思います。イルカと遊べる観光地にすれば海外からも観光客が来ます。これは観光という大事な産業にプラスになる解決策ではないでしょうか。

2015年5月3日日曜日

休暇の取り方

拙著「成果主義の前提」で紹介したように、日本では「人に仕事をつける」のが普通です。このため「手の空いている人は他の人の仕事を手伝う」必要があり、自分の仕事の範囲が決まっていません。仕事の能率が良くて時間がある人は大手を振って有給休暇を取れるはずなのに、日本ではそうなっていません。このため5月の連休や週末などに旅行が集中して、観光地の年間稼働率を下げています。週の半ばの水曜日に観光地に行くと、お店が休みになっている事もよくあります。他の人に気兼ねして休暇が取れないのは、自分が休むあいだ他の誰かが自分の仕事を代行するからです。ではアメリカのように「仕事に人をつける」方式の場合、自分が休むあいだ自分の仕事はどうなるでしょうか。急ぎの仕事でなければ、そのまま放っておきます。普通は休暇に入る前に上司と仕事のスケジュールを調整するので、休暇に入る前に必要な仕事は全部済ませておきます。自分の仕事の範囲が決まっているので、他の人に気兼ねなく休むことができます。このため連休や週末に集中することなく、自分の仕事のスケジュールに応じて好きな時に休暇を取ります。「仕事に人をつける」方式だとそれぞれがバラバラに休暇を取るため、三週間程度のまとまった休暇を取る人も珍しくありません。すると観光地の年間稼働率が上がり逆に混雑は減るので、観光地と旅行者の両方に良い結果になります。では放っておけない仕事の場合はどうでしょうか。この場合はスケジュール調整の段階で上司が指定した特定の人とペアを組みます。この人と仕事を共有することで、休暇中はこの人に仕事を代行してもらいます。ただし、マネジャーの場合はその上司が申請の承認等の仕事を代行します。自分の仕事がちゃんとできている限り、休暇を取るのは権利であると同時に義務でもあります。時々休みを取ってリフレッシュして仕事に励んでくれというのが有給休暇の意味です。休暇のあと仕事への意欲が増したという経験はありませんか。忙しすぎて休暇を取れない仕事をしている人は上司に解決を求めます。もし解決出来なければ、その仕事をやめて他のもっと良い待遇の仕事をするだけです。「仕事に人をつける」社会では自己責任で働く場所を決めるので、過労死は起きません。

2015年4月28日火曜日

原発のコスト=数字のトリック

原子力発電は2030年時点で1キロワットアワー当たり10.1円以上という報道がありました[^1]。その前提は実にお粗末なものです。福島原発事故の結果、日本の原発が過酷事故を起こす確率は40年に一度です。その結果かかる事故処理費用もまだ確定していません。でもその費用を適当に見積もり、コストに含めたのが4年前の8.9円以上でした。今回の試算では、安全対策を強化したので事故確率は半分の80年に一度になるという仮定をしたそうです。そのため安全対策の費用と事故費用がコストを1.2円押し上げるという理屈です。まず事故確率が80年に一度という前提を受け入れるかどうかという国民的議論はないし、事故確率が半分になるという仮定も根拠があやふやです。こうしたいい加減な前提を明らかにせずに結果だけ10.1円(しかもこれは下限)という数字を流すのは報道機関として取材が不十分です。政府の出す報道資料を右から左に流すだけならインターネットで十分であり、お金を取る報道機関は要りません。アメリカやイギリスが計算すると原発のコストは16円と高くなります。どうしてこんな違いがあるのでしょう。日本は使用済み核燃料を再利用するという建前のため、これを処理する費用をわざと少なく見積もっています。ところがアメリカやイギリスは再処理せず廃棄するので、廃棄費用をコストに含めています。一方日本での使用済み核燃料の再処理は「もんじゅ」の事故をみれば分かるように失敗続きでコストの算定すらできません。政府が出す数字を見たら、その裏にある前提まで取材して報道するのがプロの仕事です。この下限の数字で原発が一番安価だというのは大間違いです。

^1: http://mainichi.jp/select/news/20150428k0000m020086000c.html

2015年4月26日日曜日

街の区分け

アメリカは新しい街が多いので、最初から東西南北の道を作り、場所を用途に応じて区分けした所が多くなっています。どう区分けするかというと、まず中心にはお店の多い商業地域、その外側にアパートや集合住宅が建ち並ぶ場所、その外が一軒家を建てる住宅地域、最後には農地か未使用の荒野が広がるという具合です。日本とちがうのは、集合住宅と一軒家が建つ場所をきっちり分けている事でしょう。一軒家の持ち主は自分の家が投資物件だと思っているので、その市場価値に敏感です。集合住宅にはまだ一軒家を買えない人が住むので、集合住宅と一軒家を建てる場所を分けることで家の市場価値を維持します。集合住宅には独身や若夫婦が多く、年配や子供がいる家庭が多い一軒家と場所を分けることで誘拐などの犯罪を防ぐという意味もあります。日本のようにアパートと一軒家が混在していると、ゴミの捨て方など住民同士の問題が起きがちです。土地が狭い日本だと、集合住宅と一軒家が建つ場所を分けられなかったのでしょうね。

2015年4月11日土曜日

英語のメニュー

先週ギリシャとトルコに家族で行ってきました。今回の旅行で気付いたのは旅行者に対するお店の姿勢です。国際的なアテネやイスタンブールのような都市だと、お店には地元の人だけでなく国外からの旅行客もやってきます。そのため気が利くレストランは必ず英語のメニューを用意しています。左側が現地の言葉で右側が英語というメニューもよく見かけました。英語のメニューを別に用意してあるレストランもあります。メニューに写真があればなお良いでしょうけど、食べ物の場合は材料を知りたいので、やはり文字で書かれたメニューに食材が書いてあると安心できます。英語のメニューがあれば店員の英語は片言でも十分です。日本も旅行客が来そうなレストランでは英語のメニューを用意するのが親切でしょう。

2015年3月17日火曜日

高3の英語力

3月17日の各紙は国公立の高校3年生を対象に文部科学省が昨年行った英語テストの結果を発表しました。当然のことながら結果は惨憺たるものです。読売新聞^1の表現によれば「政府は、高卒レベルの英語力の目標を実用英語技能検定(英検)の『準2級~2級程度以上』としているが、最も成績が良かった『読む』でも約73%が英検3級以下の中学レベルにとどまった。『書く』『話す』も約87%が中学レベルだった。」となっています。高校3年が中学レベルとは情けない限りです。でも英語を学ぶ理由が大学受験しかなく、その大学も定員割れしているため、受験で英語の成績が悪くてもどこかの大学には必ず入れるのが現実です。これでは普段英語を使う必要がない日本で、高校生が英語力を付ける理由はありません。英語を学ぶ目的が大学受験しかないと当然こうした事が起きます。日本から外国の大学に留学する学生が少ないのも、さもありなんという状況です。英語を受験科目ではなく仕事の道具として教える教育改革が日本には必要です。ほとんどの人は社会に出てから英語の必要性を感じて自費で学び直すため、時間と費用の無駄が生じています。英語が使えればより多くの給料が得られる仕事に就けるので、英語教育の不備は日本で収入格差が拡大する理由のひとつにもなっています。

^1: http://www.yomiuri.co.jp/national/20150317-OYT1T50098.html

2015年3月7日土曜日

通訳案内士

通訳案内士は日本独自の国家資格です。日本に来た観光客を有料で観光地などに案内する旅行ガイドに必要で、1949年にできた通訳案内士法という法律が定めている資格です。この法律ができた時には太平洋戦争が終わってからたった4年しか経っておらず、日本国内には英語の看板もなければ英語を話せる人もわずかでした。それから66年が経ち世の中は大きく変わりました。日本の経済がこれほど海外からの観光客に依存するようになったのにも関わらず、この古色蒼然とした法律はそのままです。日本全国には1万7000人ほどの有資格者しかいません。年間訪日客数が一千万人を超える時代に、わずか千人にひとりの割合です。悪質な旅行ガイドを排除する目的で作られたこの法律は、もう現状に合わなくなりました。今はインターネットで旅行ガイドを選ぶ時代なので、悪質なガイドは自然と評価が低くなり淘汰されます。逆に無料でガイドして知り合いの店に観光客を案内して買い物をさせ、その店から手数料をもらっても法律違反にはなりません。規制撤廃のひとつとして、訪日客数を一桁増やすために通訳案内士法は廃止すべきです。訪日観光客にとっては、お店の店員、駅の駅員、宿の従業員、観光地のスタッフなど、今や日本国民全員が「民間の外交官」なのです。

2015年3月1日日曜日

ブログ本その3

「アメリカから日本が見える」シリーズの第3弾を出しました。このシリーズの最終巻です。

http://www.amazon.co.jp/dp/B00U4GQZS6

2015年2月22日日曜日

話題の不等式

ピケティ氏の「21世紀の資本」で話題になった「r>g」という不等式のお話です。資本収益率を示すrと経済成長率gとの間には、歴史的にみて前者が常に後者を上回るという観測データがあるというのは、データの取り方が妥当な限り誰にも反論できない事実です。経済学は歴史学なので過去のデータからモデルを作って未来を予測します。なぜこの不等式が成り立つのかという証明がないという指摘は意味がありません。なぜならこれは数学ではなくて歴史学だからです。でもこの不等式を背理法で説明することはできます。もし「r<g」なら資本を投資するよりも働いて所得を増やした方が割りが良いので、だれも投資をしなくなります。すると既存の産業は生産性を上げることができず、まったく新しい産業も生まれません。つまり資本主義社会が発達して拡大するには資本を投資する必要があり、「r>g」でなければ資本主義社会は衰退します。現実に資本主義社会はまだ拡大しているので、今のところ「r>g」は当分続くでしょう。「ナニワ金融道」というマンガにもあるように「資本主義では資本家になるのが勝ち」なのです。

2015年2月15日日曜日

敷地最低面積

シリコン・バレーの各都市には家の敷地に最低面積が決まっています。これは限られた土地に小さな家をたくさん建てる事を防ぎ、人口過密を避けて町の住み心地を良くするためです。その大きさはだいたい6000平方フィートで、ほぼ550平方メートルぐらいです。つまり22メートルかける25メートルぐらいの敷地が最低の大きさで、これより小さい土地には家を建てられません。これぐらい土地面積があれば平屋でも4LDKが可能で、それ以上の部屋数を望むなら2階建てにします。ただし、これだけ土地が大きいとそれなりに値段も張るので、若者はまず集合住宅の分譲を買います。英語でいうコンドミニアム、日本語だとマンションです。集合住宅なら一軒家の3分の1から2分の1ぐらいで同じ部屋数の物件を購入できます。ではこれを日本と比較してみましょう。日本には建ぺい率と容積率という縛りがあります。ところが土地の最低面積が小さすぎるか又はそのような規制が無いので、狭い土地にぎっしり家が建っています。日本でも戸建ての土地は最低200平方メートルにするなどの規制があれば、もっと住み心地のよい町が作れたのに残念です。新築一戸建てと新築マンションの価格帯が同じでは、明らかに戸建ての土地が狭すぎます。そのうえ英語でいうタウンハウス、日本語だとメゾネットタイプの家も日本では人気がありません。日本の住宅地の土地の使い方には、まだまだ改善の余地があるように思います。

2015年2月1日日曜日

新年会

アメリカの会社の新年会はカップルでの参加が普通です。恋人がいれば恋人と、配偶者がいれば配偶者と参加します。もちろん子供連れにはベビーシッターが必要なので、参加しない家族もたくさんいます。参加するしないは完全に個人の自由です。会社の近くのホテルの宴会場を使ったり、レストランや博物館を使う事もあります。金曜日の夜6時くらいから9時くらいまでをあてて、その日は午後4時ぐらいに仕事を終わらせて一度家に戻り、普段着ているジーンズやポロシャツではなくネクタイに上着や、ドレスに着替えてパーティに参加します。新年会としてのパーティには食事とお酒、バンド演奏とビンゴなどのゲームが含まれます。アメリカらしいのはダンスをする場所がある事で、談笑するだけでなくバンドに合わせてダンスする人もいます。バンドも音楽好きの社員が演奏する場合もあり、社長は司会に徹するなどサービス精神を発揮します。従業員への感謝を込めて行われるので、アメリカの新年会では社長が席に座っている暇はありません。アメリカの食べ物にはあまり期待できないものの、英語で色々な人とおしゃべりするのが好きであれば楽しめる行事です。

2015年1月20日火曜日

モービル・ホーム

これはおそらくアメリカにしかない、土地を借りて家を建てずにそこに住む方法です。トレーラーのような大きな荷台を家にしたものをモービル・ホームといいます。普段はモービル・ホーム・パークという場所の土地を借りて、その上にこの家が載った荷台を置いて住んでいます。土地を持たないので安くその土地に住む事ができ、引退した人や所得の少ない人が住む家として人気があります。荷台なので車輪があり、場所を変える時はエンジン部分を持ってきて家ごと移動します。一台だと細長い家になってしまうので、余裕がある人は二台を横に並べて家の幅を倍にします。トイレや風呂も家に付いていて、借りた土地に引いてあるガス管や下水管とつなぎます。もちろん家に電気も電話も引くことができます。ただし昨年のナパの地震では、こうしたガス管が外れて火災を起こし、燃えてしまったモービル・ホームがありました。土地に固定されていないので、車輪の上の家は揺れが大きくなるという欠点もあります。道路の幅が広いアメリカならではの家の形です。