2015年5月23日土曜日

GDP

日銀による円の増刷と国債の大量買い取りはセオリー通りに円安を生みました。その結果輸入物価が上がり消費を抑えています。円安は輸出企業に自動的に増収をもたらしたので、国民全員からお金を集めて輸出企業に配ったのと同じ効果があります。ところが幸い原油の値段が下がったので、電気代は為替レートほどには上がっていません。今の日本は貿易赤字なので、円安は日本全体で見れば損となります。賃金の上昇が物価の上昇を上回らないと消費は増えません。消費が増えないと税収も増えないので、大量に買い取った国債が次の世代に大きな借金として残ります。正社員の賃金が上がるだけでなく、派遣社員や非正規雇用の賃金も上がらないとGDPは増えません。名目賃金だけでなく、それと物価との差である実質賃金がどれだけ増えるかが今後の課題です。年間80兆円ものお札を刷って市場に供給したのに、そのお金が土地や株式への投資に回るだけでは賃金は増えません。

2015年5月16日土曜日

ISEF

今年のISEFの勝者[^1]が決まりました。プロセッサで有名なインテル社がスポンサーとなって毎年アメリカで行われるこのコンテストには「インテル国際学生科学技術フェア」という翻訳が当てられています。ところがこれは誤訳です。もとは「Intel International Science and Engineering Fair」なので、「インテル国際科学工学フェア」が正解です。日本の学校にはサイエンス・フェアという行事がないので「学生」を付けて対象を明示するのは良いとしても、エンジニアリングを技術と訳してはいけません。技術はTechnologyです。日本語の科学技術はSciense and Technologyです。エンジニアリングとテクノロジーを両方とも技術と訳すのは大間違いです。では工学と技術の違いは何でしょう。ざっくり言うと技術とは物作りなどの方法です。高度な技術が必要な物作りをする産業をハイテク産業と言います。インテル社はその筆頭です。そうした技術はおおむね特許に守られるか企業秘密として会社にとどまります。ところが工学は技術だけでなくもっと他の物を含みます。物作りだけでなく、すでに作ったものをどう利用し維持するかまで含みます。工学は大学で学ぶことができ、その知識は教科書を通じて公開されています。つまり枝葉の話が技術でその上位にあるのが工学です。エンジニアリングとテクノロジーを区別しないと、なぜ大学にあるのが工学部なのか分かりません。技術を教えるのは職業学校の仕事です。

^1: http://www.asahi.com/articles/ASH5J5JT9H5JULBJ00B.html

2015年5月13日水曜日

イルカ問題の解決策

日本のイルカ漁は欧米の人々には理解不能です。前に書いたようにイルカは海外の人々にとって犬や猫と同じ存在です。日本で犬を捕まえて食べる人がいないように、ごく一部の国を除くと欧米にはイルカを捕まえて食べる人はいません。イルカは鯨と同じほ乳類で賢く、芸ができるので水族館の人気者になっています。マサの考える解決策は、イルカ漁のかわりにイルカを中心にした観光で食べていくことです。もちろんこれは部外者の無責任な発言です。でもイルカ漁を理屈で正当化しても、欧米人が抱く感情的な問題の答えにはなりません。イルカと共存する道を選ぶ方が日本にとって国際的に有利だとマサは思います。イルカと遊べる観光地にすれば海外からも観光客が来ます。これは観光という大事な産業にプラスになる解決策ではないでしょうか。

2015年5月3日日曜日

休暇の取り方

拙著「成果主義の前提」で紹介したように、日本では「人に仕事をつける」のが普通です。このため「手の空いている人は他の人の仕事を手伝う」必要があり、自分の仕事の範囲が決まっていません。仕事の能率が良くて時間がある人は大手を振って有給休暇を取れるはずなのに、日本ではそうなっていません。このため5月の連休や週末などに旅行が集中して、観光地の年間稼働率を下げています。週の半ばの水曜日に観光地に行くと、お店が休みになっている事もよくあります。他の人に気兼ねして休暇が取れないのは、自分が休むあいだ他の誰かが自分の仕事を代行するからです。ではアメリカのように「仕事に人をつける」方式の場合、自分が休むあいだ自分の仕事はどうなるでしょうか。急ぎの仕事でなければ、そのまま放っておきます。普通は休暇に入る前に上司と仕事のスケジュールを調整するので、休暇に入る前に必要な仕事は全部済ませておきます。自分の仕事の範囲が決まっているので、他の人に気兼ねなく休むことができます。このため連休や週末に集中することなく、自分の仕事のスケジュールに応じて好きな時に休暇を取ります。「仕事に人をつける」方式だとそれぞれがバラバラに休暇を取るため、三週間程度のまとまった休暇を取る人も珍しくありません。すると観光地の年間稼働率が上がり逆に混雑は減るので、観光地と旅行者の両方に良い結果になります。では放っておけない仕事の場合はどうでしょうか。この場合はスケジュール調整の段階で上司が指定した特定の人とペアを組みます。この人と仕事を共有することで、休暇中はこの人に仕事を代行してもらいます。ただし、マネジャーの場合はその上司が申請の承認等の仕事を代行します。自分の仕事がちゃんとできている限り、休暇を取るのは権利であると同時に義務でもあります。時々休みを取ってリフレッシュして仕事に励んでくれというのが有給休暇の意味です。休暇のあと仕事への意欲が増したという経験はありませんか。忙しすぎて休暇を取れない仕事をしている人は上司に解決を求めます。もし解決出来なければ、その仕事をやめて他のもっと良い待遇の仕事をするだけです。「仕事に人をつける」社会では自己責任で働く場所を決めるので、過労死は起きません。