2014年3月21日金曜日

マクロ経済

著名なマクロ経済学者であるセルジオ・レベロ氏の話を聞く機会がありました。彼の意見では、アメリカの経済に関して中間所得層がどんどん減っている事が問題で、その解決策は大学卒業生を増やす事だと言っていました。中間所得層とは、工場で働く工員さんや会社で働く事務職の人たちのことです。こうした仕事は海外に移ったかコンピュータがやるようになったので、残ったのは賃金が安くて海外にも動かせない「宅配の仕事」や「レジの仕事」などです。特別な資格や技能が要らないので、移民でもすぐに働ける仕事でもあります。アメリカの失業率が下がったのは、適当な仕事がないため仕事を探すのをあきらめた人が多いからで、仕事の数が増えたからではないとも指摘しています。日本はアメリカの真似をして2013年から市場に資金を供給する量的緩和策を取りました。人口が増えているアメリカの問題は貧富の差の増大です。日本もこれから中間所得層が減り貧富の差が増大するとマサは予想します。高額商品と低額商品が売れて、その間の商品は売り上げが減少します。両者を合わせた売り上げは、ほぼ横ばいというのがマサの予想です。人口が減る国で売り上げは増大しません。デフレもインフレも結果であって原因ではないので、人口減少という原因を無視して量的緩和策を取っても一時的に不動産のミニバブルが生じるだけです。「ない袖は振れない」のであって、日本の景気悪化に歯止めはかからず、国債の額が増えるだけに終わると予想します。人口を増やせないのであれば、一人当たりの稼ぎを増やすしか手がありません。つまり国内産業に従事する人の生産性が上がらなければ、日本は中国などの新興国に負け続けるでしょう。機械化することで生産性を上げると、失業者を増やすのでさらに貧富の差が増大します。経済格差を容認して金持ちを増やすのか、それもと全員が等しく慎ましい生活をする国になるのか、どちらがお好みですか。

2014年3月14日金曜日

賃上げ率は?

このところ日本の新聞はベースアップの話題で盛り上がっています。もともと低賃金で有名な電機大手は月額2千円で決着とか。アベノミクスの根本はインフレと賃上げなので、とりあえず正社員の月給が上がるのは良い事です。問題は4月から消費税が3%上乗せされる事で、賃上げはこれを上回る割合でないと実質賃下げとなります。月額2千円は月給が20万円なら1%に相当します。つまりほとんどの正社員にとってこの額では実質賃下げです。この程度の額で妥結する労働組合も情けないし、実質賃下げとなる事を報じない新聞も勇気がありません。賃金が3%以上増えないと4月からの消費は減少します。おまけに派遣など非正社員にはこうした賃上げは期待できません。日本は低負担・中福祉の国なので消費税は今後もっと上げる必要があります。それなら賃上げの報道も額ではなく割合に焦点を当てるべきです。こうした的外れの報道を鵜呑みにしていると、大事な事実を見落としてしまいます。

2014年3月9日日曜日

夏時間

今日からアメリカの夏時間が始まりました。これは3月の第二日曜日から11月の第一土曜日まで続きます。「夏時間」というのは俗名で、正式には「Daylight Saving Time」と呼びます。3月だと北部の州では季節はまだ冬で、山には雪が降ります。同じく11月を夏と呼ぶのも違和感があるでしょう。夏時間を設ける目的は、日照時間が長い初夏から初秋までの期間に1時間早起きして、暗くなるまでの時間を1時間延ばしましょうという事です。つまり仕事が終わってもまだ十分明るいので、涼しくなる夕方の時間で街歩きやスポーツができます。長い昼間の時間をより有効に使う事で、仕事以外に使う時間が増えて経済にも好影響があります。ところが、この制度が効果を発揮するにはひとつの大事な条件があります。それは仕事に人を付ける社会であるという事です。つまり自分の仕事時間は完全に自分で決める事ができ、となりの人がまだ働いていても自分の仕事が終わればさっさと帰宅できるという社会です。夏時間ではまだ外が明るいうちに退社できるので、アメリカのように仕事に人を付ける方式でないとうまくいきません。日本では人に仕事を付けるのが普通なので、手のあいている人は他の人の仕事までやる必要があります。こうした社会では、全員がその日の仕事を終えるまで誰も帰宅できません。まだ働いている人を尻目にさっさと自分だけ退社すると「あいつは身勝手なやつだ」という評判がたってしまいます。その結果みな他人の目を気にして暗くなるまで帰宅しないので、労働時間が1時間延びてしまいます。これが戦後日本で夏時間の導入に失敗した理由です。

2014年3月6日木曜日

法人の責任

福島第一原発事故が明らかにしたのは、原発の過酷事故は一度起きてしまうと民間の事業者では手に負えないという事実です。東電だけでは事故の収束も補償もできません。それに日本の法律では奇妙なことに、天災により引き起こされた原発事故では誰も責任を取らなくていい決まりになっているので、そうした事故の被害者は泣き寝入りするしかありません。次に3・11のような大地震がもし日本海側で起きれば、風は西から東に吹くので、その結果起きる原発事故の規模は福島を軽く越えてしまいます。能登半島の原発が爆発すれば放射性物質で東京が汚染されます。千年に一度の天災まで想定して対策を立てる必要があるのに、恣意的に想定の範囲を狭めて原発の発電コストを見かけ上安くしています。でもそうした甘い想定をした人の責任が問われないのは納得できません。想定外と言う以上、その想定で良いと判断した人が会社にいるはずで、そうした誤った判断に対する罪を問うべきです。そのためには社長や会長という個人ではなく、法人の責任を問う法律を立法する必要があります。原因に関わらず事故を起こすと会社が大損してしまうという仕組みを作らないと、また同じような甘い想定の隙を突いて日本で原発の過酷事故が起きるでしょう。日本で原発を使い始めてからまだ40年しか経っていないのに、3機もの原子炉が大破しました。もしまた日本の原発を全部動かせば、次の10年の間に福島原発事故のような過酷事故が再び1回起きる計算です。あれほど広告で安全を自慢していた日本の原発は、今や世界で最も事故確率の高い欠陥商品となりました。

2014年3月1日土曜日

不文律

法律や条例として明文化されていない決まりが多い文化を高文脈文化 (high-context culture) といいます。日本は不文律が多いので、高文脈文化を持つ国です。その反対にアメリカは低文脈文化の国です。不文律がほとんどなく、法律や条例に書いてない事はやってもいい事になっています。例えばエスカレーターに乗る時、片側に寄って反対側を空けるというのは日本に特有の不文律です。アメリカにこのような「常識」はありません。電車やバスの中は静かに過ごすというのも日本の不文律です。これを破るのは「常識」のない外国人か酔っぱらいです。年上には敬語を使うのも不文律です。不文律は経験して覚えるので、外国人が日本の不文律を理解するには何年もかかります。その逆にアメリカは法律や条例で「やってはいけない事」が列挙されているので、外国人がアメリカの常識を学ぶのは簡単です。日本は聞き手が「行間を読む」必要があり、アメリカは話し手が「言葉を尽くす」必要があります。歴史の長い国ほど不文律が多いとは限らず、ドイツなど歴史の長い国でも低文脈文化を持つ国があります。