2016年9月25日日曜日

笛吹けど踊らず

日銀の「総括的な検証」を読むと、物価の年率2%上昇に失敗した理由として「原油安」の他に「国民が日銀の言う未来を信じなかった」という意味の事が書かれています。つまり「笛吹けど踊らず」です。人口が減り、国債という国民の借金は増え、消費税という税金も増えるという状況で、これから(なぜか)景気が良くなると信じて支出を増やす人がいなかった、という当たり前の結果です。原因と結果を逆に考えるからこうなります。需要が増えて供給が追いつかないから物価が上がるのであって、円安を起こして(輸入)物価を上げても需要は増えません。賃金が上がらなければ消費は増えないし、人口が増えなければ需要は増えません。円安のため海外からの観光客が増えたのは良いとしても、人口を増やす抜本的な政策がなければ、もう日銀にできる事はありません。少子高齢化は国の根本に関わる大問題です。税金を払う人が減り、税金をもらう人が増える日本で、国債にいつまで頼るのか、日本政府にその答えはありません。

2016年9月2日金曜日

アメリカの雇用問題

先日読んだ本 [^1]によると、アメリカの被雇用者数は2000年から2010年の10年間でちっとも増えなかったそうです。その原因はふたつ指摘されていて、この10年間に海外へ仕事のアウトソーシングが進んだためと、今まで人間がやっていた仕事をコンピュータなど機械がやるようになったためです。当時もシリコン・バレーでエンジニアをしていた筆者には納得できる話です。今と違いソフトウェア・エンジニアの仕事はどんどん中国とインドにアウトソースされていました。2005年のある日、勤めていた会社のCTOが「design on shore, implement off shore」と言うのを壁越しに偶然聞いてしまい、驚いた事もありました。コストカットが厳しく、アメリカで一人雇うお金があればインドで三人雇えるとも言ってました。インターネットのおかげで海外との通信費がほぼタダになり、アメリカのIT会社がこぞってインドに拠点を作っていた時代です。AT&Tのカスタマー・サポートの電話もインドに転送され、インドなまりの英語を話すオペレーターと戦わなくてはなりませんでした。数年後そうした電話は機械が回答するようになり、人減らしが進んだ事がうかがえました。

^1: ロボットの脅威 https://www.amazon.co.jp/dp/B01B2Q2BWK