2014年12月27日土曜日

一流のエンジニア

シリコン・バレーには一流・二流・三流の三種類のソフトウェア・エンジニアがいます。一流のエンジニアは全体の一割くらいを占め、プログラムを書くのが何よりも好きで、会社の仕事だけでは飽き足らず、夜や週末はオープン・ソフトウェアのボランティアとして活躍します。彼らの書くプログラムは効率が良く、誤りが少ないうえ、変更も容易です。さらに二流のエンジニアの十倍の生産性があります。このため二流のエンジニアの倍の給料でもおつりが来ます。博士号を持っている人も多く、会社の中で一目置かれる存在です。これに対して二流のエンジニアは全体の六割ぐらいで、計画に沿って着実に仕事をこなし、必ず会社の中核をなす部隊の中心にいます。彼らは会社の仕事だけで満足しているので、プライベートの時間を使ってまでプログラムを書く人はまれです。さらに三流のエンジニアともなるとコンピュータ科学以外の学部を出た人も多く、例えば生物学や数学を学んだけどプログラムを書く方がお金になるので、独学でソフトウェア・エンジニアになった人がいます。プログラミングの経験が足りないので、効率が悪くて変更が困難なソフトを書く場合もあり、セキュリティの問題もよく起こします。三流のエンジニアはトレーニングや経験を通じて二流のエンジニアに進化することができ、割合でいうと全体の三割ぐらいを占めます。本当はこの他に超一流のエンジニアがいて、一人で世の中を変えるソフトを作っています。例えば Linuxカーネルを作ったリーナス・トーバルズとか、Javaを作ったビル・ジョイとか、Mosaicブラウザを作ったマーク・アンドリーセンなどが好例です。こうした超一流のエンジニアは世界でもせいぜい十人ぐらいなので、割合から言えばとても貴重な存在です。このためIT業界を支えているのは二流のエンジニアが中心となり、筆者もその一人として働いています。二流のエンジニアと一流のエンジニアの違いは主にプログラミングにかける情熱の差で、一流のエンジニアは変わり者が多いので良い意味で「ハッカー」とも呼ばれます。世の中を変える新しいソフトを作るのは一流のエンジニアが大好きな仕事です。そのためには毎日12時間働いても彼らは文句を言いません。

2014年12月18日木曜日

薬の処方箋

アメリカでも医者は薬の処方箋を書き、患者は自分で好きな薬局からその処方箋で薬を買う事ができます。薬のコスト削減のため、もしジェネリックがあれば医者は自動的にジェネリックを選びます。保険によっては患者がジェネリックを使うかどうか選べるものもあり、もしジェネリックを使わないと患者の自己負担額がその分だけ増えます。医者の手書きの処方箋は最近はほとんど姿を消して、パソコンで打ち出した紙にサインしたものか、あるいは患者の指定する薬局に電子的に送られるものが主流になっています。血圧の薬などは一度に三ヵ月分買えるので、インターネットや通信販売で注文できます。処方箋をFAXで送るか郵送すれば、近くの薬局から買う場合と比較して半額ぐらいの自己負担額で薬を買うことができます。処方箋には何回分使えるかが明記してあるので、一回に三ヵ月分として四回使えるなら一年分です。アメリカはもともと通信販売が盛んなので、処方箋の薬でも当然のようにインターネットや通信販売で買う事ができます。まだ日本では処方箋の薬をインターネットや通信販売で買う事はできないそうなので、薬代を下げるにはこうした規制の撤廃が必要です。

2014年12月10日水曜日

高速道路無料化で地方創生

地方創生には主な高速道路を無料化するのが一番です。高速道路の建設費はガソリン税と重量税を増やして回収します。まず高速道路を無料化すると、目的地だけでなく途中での高速道路の乗り降りが盛んになり、途中の地方にもお金が落ちます。その上わざわざ道路料金を集めるお金も要りません。当然観光業にも好影響があります。地方に仕事を作るには移動にかかるコストを大幅に下げる必要があり、高速道路を無料化すれば電車や飛行機の料金も下がります。今はガソリン代よりも高速料金の方が高いので、せっかく車を持っていても使い道がありません。普通の国道は無料なのに高速道路だけ有料にするのは無意味です。高速道路の建設は国民全員の役に立つ投資なので、無料化して道路を積極的に使うのが国民のためになります。どのみち道路は使っても使わなくても時間とともに劣化するので、わざと有料にしてせっかく作った道路を使わないのは愚かです。首都高など無料化すると混雑して困る場合のみ、道路料金を課して利用者数を加減します。道路は生き物の血管と同じで、その流れを良くすれば国全体が元気になります。

2014年12月2日火曜日

規制緩和は自己責任

今の日本は1970年代のイギリスに似ています。当時のイギリスは手厚い福祉政策と多すぎる国有企業のせいで、英国病と呼ばれるほど経済が衰退していました。国有企業は経営努力を怠ったため赤字で、法人税が高かったので民間企業が外国に本社を移してしまい、イギリスの税収が減って国の借金である国債残高だけが増えていました。そこに登場したのがマーガレット・サッチャー首相で、彼女は1979年から福祉の大幅削減と国有企業の民営化、さらに税制改革、財政支出の削減、規制撤廃などを行い国際競争力のあるイギリスを取り戻そうとしました。それでも2001年にブレア内閣が英国病の克服を宣言するまで実に22年もかかっています。実際サッチャーが首相を務めていた間は、イギリスの失業率が上がるなど効果より副作用の方が問題でした。これを日本と比較すると、手厚い福祉政策と国債頼みの財政、電気やガス、銀行といった競争のない企業が多いなど類似点がたくさんあります。サッチャーが英国民に自覚させた大事な事は「タダのランチはない」という事実です。手厚い福祉政策を維持するには多くの税金が必要で、法人はそれを嫌って他の国に移りイギリスの税収を減らしました。福祉を大幅に削り、法人減税を断行し、規制撤廃を行うには「自己責任」が前提です。つまり何でも税金で面倒をみる「大きな政府」ではなく、軍隊や警察といった最小限の行政サービスのみ税金でまかなう「小さな政府」への変身です。同じく日本の規制緩和にも「自己責任」という覚悟が大切です。規制が減るという事は自由に経済活動ができると同時に、利用者が自分の責任でサービスを選ばなければいけないという事です。保育園なら認可という制度をやめて民間企業に自由にやらせるという事です。質を重視して保育士の多い高価な保育園を選ぶか、それとも値段を重視して安い保育園を選ぶかは利用者に決める責任があります。こうした「自己責任」を受け入れるなら日本でも規制撤廃は可能でしょう。でも「お上に頼る」伝統のある日本では「小さな政府」は実現できそうもありません。規制緩和が日本で進まない本当の理由は、国民が「自己責任」で生きる覚悟を持っていないからです。成長産業を国に決めてもらうという発想そのものが「自己責任」から外れています。税金を減らしたければ政府の仕事を減らさなければなりません。

2014年11月27日木曜日

需要と供給

賃金は需要と供給で決まります。物価も需要と供給で決まります。人口が減る国では人口と共に需要も減るので、賃金と物価が同時に下がります。これを見て賃金と物価に因果関係があると考えるのは大きな間違いで、両者には直接の関係はありません。もし賃金と物価の両方を上げたいのなら、まず需要を増やさなければなりません。それには人口を増やすか、海外からの観光客を増やす事が必要です。その一方で物価は円安にすれば上がりますし、消費税を増やしても税込みの物価は上がります。ところがそうした政策では需要はかえって減ってしまいます。本当は減税して需要を増やしたい所なのに、日本の財政赤字が巨額なせいで減税もできません。つまり財政的な手法では、袋小路にある日本の経済を救う事はできません。もちろん根本的な解決策は人口を増やす事です。ただしコストのかかる移民では解決になりません。移民には親や子供がいるので社会保障にお金がかかるうえ、日本語を教える教育費用もかかるからです。人口を増やすには何十年もかかるので、短期的には円安を利用して海外からの観光客を増やすのが今の正解です。英語や中国語の看板を増やしたり、外国語が使える宿やお店を増やすには5年もあれば十分です。

2014年11月21日金曜日

アベノミクス失敗

アベノミクスはお金を日本中にばらまいて円安を作り、インフレを創り出すのが目的です。輸入物価が上がり、輸出企業の株価も上がって、不動産の値段も上がりました。ところが賃金が物価の上昇に追いつかないため、景気は予想したほど上がりません。国民はバカではないので、消費税が3%上がるなら賃金はそれ以上に上がらないと実質賃下げという事は知っています。実際には平均で賃金は上がっていないので、国民は平均で3%消費を減らします。金融緩和と消費税値上げは車のアクセルとブレーキを同時に踏むようなものです。確かに物価が上がり、消費はそれとは逆に減っています。つまり日本はスタグフレーションの入り口にいます。このまま人為的なインフレが進み景気が後退すると税収はますます減ってしまいます。これは税収を増やしたい政治家と官僚には受け入れがたい予想です。ではなぜ賃金が上がらないのでしょう。一部の業種、建設業や飲食業では賃金は上がっています。賃金は物価ではなく需要と供給で決まるので、需要が増えないから賃金が上がらないというのが真相です。人口が減る国では需要も減るので、結果としてデフレになります。円安で海外からの観光客が増え、それにつれて需要が増えれば賃金も上がるでしょう。でも日本は中国や韓国と輸出競争をしています。そうした国の賃金は日本より低いので、なかなか輸出を通じて賃金を上げることは困難です。アメリカのように人口が増える国の施策をただ真似しても、人口の減る日本では同じ結果にはならないという当たり前の事が起きています。商品券を配るというようなノータリンの政策ではなく、海外からの観光客を倍にするような政策を望みます。

2015年5月19日追記
2014年度の実質賃金は3・0%減少した[^1]そうで、円安による物価高と消費税の増加が賃金の上昇を上回った事が公式に確認されました。前年度と比べると2015年度は消費税の影響がなくなるので、物価高はあっても実質賃金はプラスになると期待されています。問題はそれが貯金に回らずに消費に向かうかどうかです。幸い原油の値段は低いので物価上昇は抑えられています。国民が今後賃金が増えると思えば消費を増やすし、そう思わなければ人口減によって消費は減ります。この局面での物価上昇は単に消費を減らすでしょう。

^1: http://news.livedoor.com/article/detail/10128908/

2014年11月16日日曜日

観光の力

2013年の日本の訪日外国人観光客数が1000万人を超えました。平均で一人あたり10万円使うと仮定すると、総額は1兆円の消費となります。つまり海外からの観光客がドルを円に換えてホテル代、交通費、食事代、土産代などに一人で10万円を使えば、1兆円の輸出をしたのと同じ経済効果があります。これだから観光業はバカにできません。これからの日本を救うのは海外からの観光客です。製品輸出額が減少しても観光収入が増えれば心配ありません。それに観光客が行くのは東京や大阪だけではないので、日本の田舎にもチャンスがあります。たとえば台湾の観光客は北海道の雪景色を見に日本にやってきます。では海外からの観光客を増やすにはどうしたらいいでしょう。それにはまず第一に中国や台湾、韓国やインドネシアなど経済発展が進み、海外に行ける金持ちが増えている国を対象に日本を売り込む事。次は英語や中国語などによる案内を増やし、外国語で観光客に対応できる宿や店を増やす事。そして日本の魅力を増やすために国民の教育にもっと税金を使う事です。観光業では人が利益を生む原動力なので、自分の頭で判断できる人を育てる教育が必要です。

2014年11月1日土曜日

日本のWifiがひどい

これは2年前にも書いた話です。日本だとお店のWifiが自由に使えないので、外国から来た旅行者には不便きわまりないという問題です。普通の日本人は携帯電話のデータ通信が使えるので、これは問題になりません。ところが今どき駅やお店のWifiが自由に使えない先進国は日本ぐらいです。せっかくスマホを持っているのに、これでは何の役にも立ちません。どうしてこんな情けない状況がいっこうに改善されないのか、マサには意味不明です。日本でポケットWifiルータをレンタルすると、一日で千円もかかります。Wifiが犯罪に使われた場合に、お店の責任を免責する法律が必要ではないかと思います。日本にもっと観光客を呼ぶには、無料で登録なしに使える自由なWifiがどのお店にも必要です。自己責任でWifiを使うのが前提なのに、自己責任を嫌う日本だと無料のWifiでも登録して身元を明かすのが条件です。英語しか読めない、海外からの旅行客の立場に立っていません。日本語の使用方法しか表示しないWifi接続もたくさんあります。その中でかろうじて使えるのは、セブンイレブンとマクドナルドの無料Wifiです。でもどちらも事前の登録が必要なため、海外からの旅行客には使いにくいサービスです。これは政府が音頭を取って東京オリンピックまでに改善しないと、世界中の人から文句が出るでしょう。

2014年10月30日木曜日

ハロウィーン

日本だとハロウィーンはすっかり大人の仮装パーティとして扱われています。もちろん日本のカボチャはとても美味しいので、そのカボチャを使ったパンやお菓子が巷に溢れるのは、同じく旬な栗を使ったお菓子がこの季節に増えるのと同じく嬉しい話です。でも日本だと、ハロウィーンの主役は子供だというアメリカの常識は通じません。クリスマスと同様にハロウィーンも商業主導で日本に導入されたため、意味がずれてしまったようです。もちろんその違いを知っている限り、この違いは必ずしも悪いことではありません。アニメの影響で日本だとコスプレが盛んです。そのコスプレとハロウィーンが日本で合体した現状を見ると、悪霊を怖がらせるために家を墓場のように飾り立てたり、魔法使いの格好をするアメリカの大人とは明らかに向いてる方向が違います。そもそも子供がキャンディをもらうために仮装して家々を回り、「トリック・オア・トリート?」と問いかける行為自体が日本にありません。「お菓子をくれなきゃ魔法をかけちゃうよ」というこの言葉の意味も、またハロウィーンが干し草を集めて収穫を祝う秋祭りの一種であることも、おそらく大部分の日本の人は知らないでしょう。なぜオレンジ色のカボチャをくりぬいてランタンを作るのか。それはこのカボチャが食べても美味しくないからです。日本のカボチャのような美味しいカボチャは、もともとアメリカにはありませんでした。そのかわりハロウィーンに使うカボチャはオレンジ色で綺麗なので、飾りとして利用します。もとはケルト人のお祭りであるハロウィーンは、今やアメリカと日本で違う物として利用されています。

2014年10月25日土曜日

企業インターン

最近よく聞くのが日本の企業インターン制度です。日本の労働形態では企業が4月に大学卒業生を大量に雇うので、その前の年などに大学生をインターンとして働かせるそうです。問題なのはその期間で、半日から2週間となっています。これは短期アルバイトと何が違うのでしょうか。インターンは企業と学生のお見合いの場です。たった半日で何が分かるのでしょうか。いや2週間でも足りません。企業がインターンの能力を見極めるには最低3ヵ月は必要です。何かまとまった仕事の成果を出してもらうにも、そのくらいの時間がかかります。お試しコースではなく、見習い期間がインターンの意味です。海外の大学だと、最低3ヵ月のインターンを経験しないと卒業できない学校もあります。アメリカでも夏休みになると、インターンが企業にわんさか働きに来ます。最初の1ヵ月で仕事の基礎を学び、次の1ヵ月で色々なアイデアを試し、最後の1ヵ月で社内発表を仕上げます。その仕事の成果は学校に提出して単位をもらいます。もし企業がその学生を気に入れば、その人の卒業に合わせて就職のオファーを出します。このお見合いで学生と企業のどちらか一方が相手を気に入らなければ、次の年にまた他の企業でインターンをするだけです。大学4年間で少なくても3回はインターンの機会があります。インターンの経験は履歴書で自分を差別化するよいポイントなので、履歴書の空欄を埋めるために学生は積極的にインターンを利用します。最近はグーグルのようにインターンの学生に月収40万円も出す会社があります。ここシリコンバレーでは、どの企業も良い学生を早く手に入れようと必死です。

2014年10月18日土曜日

遊び

日本は遊びの少ない国です。ここで言う遊びとはハンドルの遊びのことです。ハンドルの遊びが少ないと、ちょっとした手の動きで運転している車が敏感に反応してしまうので、いつも気が抜けません。楽に車を運転するためには、ハンドルのある程度の遊びが必要です。これは車を運転する人ならご存じでしょう。人間はロボットではないので、手は毎日同じようには動きません。だからいちいち手の動きに反応してしまう車は、かえって運転しにくいのです。日本には余裕がないとも言えます。例えば仕事のスケジュールを立てるとき、チーム全員が100%の能力で働くと仮定していませんか。スケジュールに遊びがないと、ちょっとした遅れが積み重なって大きな遅れになります。病気になる人もいれば、家族が倒れて100%の時間を使えない人もいます。それに従業員の休暇の時間はスケジュールに最初から入れておくべきです。すると見積もりの倍ぐらいがちょうどいいスケジュールになります。そうした遊びを入れずに計画を立てるから、少子化が進み過労死が起こります。人生の目的は生きることです。生きて次世代により良い社会を残すことです。少子化や過労死が当たり前の国では国民が生き残ることができません。そうした遊びのない人生では生きるのが辛くなります。ハンドルに遊びが必要なように人生にも遊びが必要です。人生の半分が遊びのアメリカ人に、日本人はこの点で負けています。2年ぶりの里帰りで日本に息苦しさを覚えたマサでした。

2014年9月15日月曜日

蚊のいない夏

今年のカリフォルニア州は大干ばつで、本来冬に降るはずの雨が例年の十分の一程度でした。そこで各家庭の水を節約するため、昼間に庭に水をまくことが禁止されています。また車の洗車や池の噴水なども自制するよう、州知事がお願いしています。いつも夏は乾燥した天気が続くこのあたりで、庭のスプリンクラーによる散水が減ってひとつだけいい事があります。それはまったく蚊を見かけない事です。今年の夏はこの地に蚊が全然いません。水たまりがないため蚊が繁殖できないのでしょう。蚊はちょっとした水たまりでも、三日もあれば卵からかえってボウフラになります。その後十日ほどで成虫になるので、水たまりをなくせば蚊のいない夏を実現できます。庭に水をまくと余った水が道路脇や溝にたまってボウフラがわくので、干ばつの今年はそうした水たまりがなく、蚊の繁殖を阻止しています。日本でもデング熱が発生して蚊の退治をしているようなので、一歩進んで町中から水たまりをなくせば蚊のいない夏を実現できるでしょう。そのためには雨が降った後その水がたまらないように、舗装に正しい傾斜を付けるか又は雨水が浸透するタイプの舗装を使うのが一番です。そのほか古タイヤやビニールのゴミ袋なども雨水がたまるので、こうしたゴミを家の近くからなくすのも効果があります。

2014年9月1日月曜日

嫌な仕事はしない

日本の労働者の仕事に対する満足度は、先進国を含む他の国と比べると割と低くなっています。たとえば2005年のISSP調査によると、日本の労働者のうち仕事に満足している人の割合は73%で、これより割合の低い国は32カ国中でラトビア、スロベニア、韓国、ロシアの4カ国しかありません。アメリカは84%、トップのスイスは93%という数字が出ています。逆に仕事がお金を得る手段に過ぎないと考える人の割合を見ると、スイスは17%、アメリカは25%、日本は39%で、韓国42%、ロシア52%となっています。つまりお金のためだけに働く国ほど仕事への満足度が低いという傾向があります。そして仕事において何が一番大事な条件かを調べると、日本では「失業の心配がないこと」であるのに対して、スイスとアメリカでは「おもしろいこと」がトップに来ています。ここから読み取れる日本とアメリカの違いは、「お金のために働き、おもしろさは期待しない」日本と「おもしろさのために働き、お金は期待しない」アメリカとなります。もちろんこれは過度に単純化した比較であって、この結果だけで日本とアメリカが正反対だという主張はしません。ところが「お金のために働き、おもしろさは期待しない」日本の場合、仕事に満足していない27%の人はどんな気持ちで仕事をしているのでしょうか。筆者はこの27%の人たちが「嫌な仕事をお金のためにやっている」と考えています。「嫌な仕事をお金のためにやっている」とイジメ、手抜き、サボりが起こるのが人間の性です。「嫌な仕事はしない」という簡単なルールさえ守れば、職場でのイジメ、手抜き、サボりは激減します。それにはまず「仕事に人を付ける」社会になる必要があり、これが仕事に対する満足度を上げる事につながります。「人に仕事を付ける」今の日本では「嫌な仕事をお金のためにやっている」人が必ずいるので、職場でのイジメ、手抜き、サボりはどの業界にもあります。

2014年8月23日土曜日

GEが家電事業を売却

GEの家電事業がついに売却される事になりました。家電の売り上げはGE全体の6%だそうで、中国や韓国の白物家電がアメリカに押し寄せる中、ついに老舗のGEも家電事業をやめて、もっと儲かる分野に資源を集中する事にしたそうです。このニュースを聴いて、9年前にIBMがパソコン事業を中国のレノボに売却した事を思い出しました。儲からないと判断した事業の売却について、アメリカの大企業は躊躇しませんね。日立がパソコンから撤退したのがIBMの2年後で、ソニーがパソコン事業を切ったのは今年なので、ソニーは日立にすら実に7年も遅れています。中国や韓国の追い上げで儲からなくなった商売をさっさと辞められない理由はいろいろあるでしょう。簡単に従業員のクビを切れないとか、トップに大ナタを振るう勇気がないとか、あるいは周りの人間が本当の事を言わないとか。でも経営のプロなら自分で数字をみて現場の人間の言うことを聞けば、それが儲かる仕事かどうかは分かるはずです。儲かる仕事が10年単位でころころ変わる時代に、日本の終身雇用制度はもはや継続不可能です。当たり前の事を言えば、雇用を守るのは「正社員制度」ではなく儲かる仕事です。そこで儲からない仕事から儲かる仕事へ、簡単に人が移れるような仕組みを作るのが政府の仕事です。つまり年齢と性別による就職差別を罰則のある法律で禁止し、人材の流動化を促すため「正社員制度」を解体します。終身雇用を否定してしまえば、正社員制度を続ける理由がなくなります。同時に年功序列も廃止して「人に仕事を付ける社会」から「仕事に人を付ける社会」に変わる必要があります。「正社員」と「派遣社員」という両極端の働き方の間には、実は労使双方に有利な「限定社員」という働き方があります。仕事や場所を限定した「限定社員」であっても、その人が儲かる仕事をしているかぎり会社にとっては必要な人材です。反対に「正社員」でも儲からない仕事をしていると、いつクビになってもおかしくありません。自分の身を守るのは自分であるという自覚を持つ人だけが生き残ります。

2014年8月9日土曜日

学校の夜のお仕事

息子が通っていたアメリカの公立高校では、9月に新学期が始まると平日を選んでBack To School Nightという行事をやります。これは先生が生徒の親に自分の担当する教科を紹介する日です。この教科の目的は何々で、使う教科書はこれ、配点は宿題が20%で中間と期末がそれぞれ40%づつ、などと説明します。また数学だとグラフが描ける電卓を授業で使うので、TI84 Plusを買うか借りるかするよう言われます。平日の午後7時ぐらいから10時ぐらいまでの3時間を使って、親はそれぞれの先生から何をどう教えるかを聴きます。親も質問があればそこで先生にじかに訊く事ができます。なお物理ならここ、英語ならあそこという具合に教科によって教室が決まっているので、息子の選んだ教科の教室を訪れて担当の先生の話を聞きます。アメリカの郊外の平均的な高校は平屋の建物が教科ごとに分かれて建っていて、日本のようにひとつの建物の中にまとまっていません。そのうえ子供により選択科目などの時間割りが違うので、その時間割りに合わせて20分ごとにひとつの教室から別の教室に全学年の親がゾロゾロと移動します。9月はまだ夏時間なので午後9時ぐらいまでは外が暗くなりません。でも9時を過ぎるとさすがに暗くなるので、親は懐中電灯を片手に地図を見ながら目的の教室を探します。学校も敷地が広いので、10分の休み時間の間に次の教室に移動するのは大変です。初めての学校で迷子になった親のために、ボランティアの高校生があちこちで道案内をしてくれます。共稼ぎが普通の国なので、夜にこうした行事をやってくれると親は助かります。でもさすがに先生もこの日は疲れるので、次の日は平日でも学校は午後からになります。

2014年7月17日木曜日

教育問題

マサはかれこれ25年以上もアメリカにいます。それは子供が大学を終えるまでアメリカにいることにしたからです。アメリカの公立教育は日本のものより質が高く、それに英語の勉強にもなるので子供の将来を考えてアメリカに残りました。もちろんアメリカの方がエンジニアの待遇が良いのは確かで、ソフトウェアを仕事にするならシリコンバレーほど良い場所は他にはないのも理由のひとつです。実はアメリカの教育は場所によって大きく違います。特にシリコンバレーは不動産が高いため、学校の収入となる不動産税が豊富で教育の質が高くなっています。ここの教育の中心は知識ではなく知恵を付けることです。例えば歴史でアメリカが日本に原爆を落とした事を習います。日本ならそれを事実のひとつとして年号とともに覚えておしまいです。ところがここの教育だと「あなたが当時のアメリカの大統領ならどうするか」というテーマで議論します。そこには唯一の正解はなく、それまで習った歴史の知識の上で自分の知恵を発揮する必要があります。「自分ならやはり日本に原爆を落とす、その理由はこれ」と言ってもいいし、「いや自分なら日本に原爆は落とさない、その理由はこれ」と言ってもかまいません。歴史を学ぶのはより良い社会を作るためなので、知識だけでは不十分なのです。教師は自分の考えを生徒に押しつけるような事はしません。ただし人を説得できる根拠を示せるかどうかは成績に影響します。まさに民主主義の根幹はこれだと思わせる授業をしてくれます。

2014年7月4日金曜日

会社でサッカー観戦

マサがいま勤めている会社では、ロビーでワールドカップを放送しています。従業員も試合経過が気になって集中できないので、希望者はラップトップを持ってロビーで試合を見ながら仕事してます。大らかというか、個人主義というか、自分の仕事をちゃんと自分で管理している限り、会議とかがなければどこで仕事しようと関係ないという考え方ですね。アメリカチームが試合中だと会議の時間を遅らせることもあります。それに会社にはいろいろな国から人が来ているので、フランス、ドイツ、アルゼンチン、ブラジルなどの試合中はロビーが観戦者でいっぱいになります。マサも日本対ギリシャの時はロビーで試合を見ながら仕事しました。ちょっと日本ではあり得ない光景でしょう。そのかわり個人が会社のネットワークを使って試合を見るのは禁止です。ITの方でネットの帯域を確保するため、ワールドカップ期間中はESPNのストリームをブロックしています。

2014年6月28日土曜日

成果主義の前提

日本で始まった「ホワイトカラー・エグゼンプション」についての、ちょっと真面目な本を書きました。日米の労働形態には両極端と言ってもいいほどの違いがあります。日本のマスコミが報道しないアメリカの労働形態について説明しました。

http://www.amazon.co.jp/dp/B00LCREXM6

2014年6月7日土曜日

昔は良かった?

平成の世に生まれて派遣で暮らす20代の人の中には、もっと早く生まれていれば良かったのにと思う人もいるでしょう。1990年頃のバブルの時代をうらやましいと思う人がいても不思議ではありません。マサはその頃もうアメリカにいたので、日本のバブル経済は経験していません。マサが日本で暮らしていた時代には、ケータイもスタバもインターネットもありませんでした。どこかに長電話をするには、前もって十円玉をたくさん集めておく必要がありました。もっと前の子供時代だとエアコンのある家は皆無で、実家の前の道は舗装されていない砂利道です。だから雨が降ると靴が泥だらけになりました。今と較べたら何もない時代です。夕方になると自転車の荷台に豆腐の入った水槽を乗せて、人のいい兄さんがラッパを吹きながら豆腐と油揚げを売りに来る時代でした。ある意味みんな貧しくて、だから国民の間にそれなりの平等感があったのが昭和の40年代です。当時を知る者としては、今と較べて昔が良かったとは思いません。確かに平成になって貧富の差は増えました。今は就職も難しいし終身雇用はまず無理です。それでも冷戦は終わり円は高い。インターネットのおかげで海外にモノを売るのも簡単で、昔よりはるかに起業しやすい世の中です。だから今の若い人は実はいい時代に生まれたと思います。人を当てにせず自分で世の中に道を切り開くつもりなら、今ほどそうした機会に恵まれている時代はありません。

2014年6月1日日曜日

知識と知恵

知識と知恵は車の両輪のようなものです。どちらか一方だけでは役に立たず、そのバランスが大切です。知識だけ多くて知恵のない人はその知識を生かす事が出来ず、新たな状況に対応できません。その逆に知識がなくて知恵だけある人は、いつも闇雲に対処するので結果を出せません。知識を生かしつつその応用をするには、知識と知恵の両方が必要です。日本の受験教育はテスト対策が中心であり、知識を増やす事に重点を置いています。知恵を測るのは難しいので、簡単にテストできる知識が中心になります。そのため学習と暗記はほぼ同義となり、勉強とは教科書を覚える事だと誤解されています。そうした知識中心の学生がいずれ国家公務員になり日本の中枢を動かすのですから、日本が新たな状況にうまく対応できないのは無理もありません。人口の減少も財政赤字の増加も以前から分かっていた事です。それなのに前もって適切な手を行政が打てなかったのは、大学受験を目標とする日本の教育体系が社会の要請に答えていないという証拠です。

2014年5月18日日曜日

STEMに力を入れるアメリカ

教育分野でアメリカが最近特に力をいれているのがSTEM、つまり Science, Technology, Engineering, Math です。Stem には幹という意味もあるので、うまい表現だと感心しました。日本語で言うと科学、技術、工学、数学です。頭文字を取れば「科技工数」という新四文字熟語に相当します。半導体大手のインテルが、大人の研究者顔負けの成果を出した高校生に大学で学ぶための多額の奨学金を出しています。政府だけでなく企業もSTEM教育の重要性を理解している点が、教育を政府に丸投げしてしまった日本との違いです。これはまた即戦力を求めるアメリカと、何でも言われた事をやる人を求める日本との違いでもあります。

2014年5月11日日曜日

シリコンバレー盛衰記 2014

また小さな本を出しました。今度はシリコンバレーの変遷が主題です。1986年から始まるマサの滞米生活も25年を超え、その間にあまたの会社が生まれては消えていきました。この本ではそうした会社の歴史をながめ、スタンフォード大学とパロアルト市がハイテク産業の発達をうながした経緯を振り返ります。マサの会社内部での経験も入ってます。お求めは下記のURLをご覧ください。

http://www.amazon.co.jp/dp/B00K4PXL66

2014年5月4日日曜日

進化論とアメリカ

進化論を生み出したのは、キリスト教徒で地質学者のイギリス人、チャールズ・ダーウィンです。アメリカは科学の発達した国というイメージがある反面、筋金入りのキリスト教徒が住む国でもあります。最近のアメリカ政府の調査によると、国民の約半数は進化論を信じていません。そのかわり聖書にあるように神がこの世を創ったと信じています。保守的な南部の州では、よく学校で進化論を教えるのは止めようという訴訟が起こされます。聖書を信じている人にとって進化論は単なる仮説であり、誤った考え方だというのが彼らの主張です。マサのモルモン教の同僚も進化論には証拠がないと主張してました。ポケモンみたいに目の前で生き物が進化しない限り、自分は受け入れないという主張です。キリスト教徒が作った国なので、いくら政治と宗教を分離しようとしても限界があります。この世は創造主が創ったと主張する宗教は何もキリスト教だけではありません。自分に分からない事をすべて神や創造主といった自分に理解できない存在のせいにするのは、ある意味とても楽な生き方です。理解できない事に悩まなくて済むからです。アメリカの科学者は常にそうした宗教と対立しながら生きてきました。宇宙の始まりも創造主のおかげと考える人は国民の半数を越えています。アメリカはキリスト教に関してはとても保守的な国なのです。

2014年4月22日火曜日

残業代

アメリカのエンジニアは年収いくらで働くので、残業代というものはありません。午後6時にはほぼ全員が帰宅しますし、週末には当直のエンジニア以外は働きません。残業代を減らすために、年収で働く日本の労働者を増やそうという動きがあります。アメリカの場合、時給で働く仕事と年収で働く仕事には明確な違いがあります。誰でも出来るレジ打ちや配達などの仕事は時給です。また日本のような正社員という制度はなく、仕事や勤務場所が限定された限定社員が基本ですし、終身雇用もありません。労働の形態がこれほど違うので、そのままアメリカを真似して残業代をなくすのは無理があります。「成果主義」と同じで結果だけ真似してもうまくいきません。もし残業代を減らしたければ、残業そのものを違法にして違反した会社から罰金を取ればいいでしょう。人は残業代が出ないとなれは、自分の仕事だけ終わらせてさっさと帰宅します。自発的に他の人の仕事を手伝う人がいなくなり、忙しい人はより忙しくなります。アメリカならそういう忙しい人は他の会社に移るので歯止めがかかるのに、日本だと簡単に会社を移れないので過労死予備軍になってしまいます。日本の労働形態を変えずに残業代だけを削るのは愚かな行為です。もしやるならまず年功序列と終身雇用と年齢差別の廃止からやるべきです。

2014年4月14日月曜日

STAP細胞問題

場外乱闘になったこの問題、科学の一端にいるマサから見れば簡単な話で、再現実験に成功すればOKで再現実験に誰も成功しなければダメです。論文に間違いがあるとか、コピペがあるとか以前の話です。国際特許を申請中のため詳細を公開できないのであれば、理研内部で再現実験をちゃんとやればいい話です。今や手のひらを返したように理研は筆頭研究者を突き放していますね。トカゲのしっぽ切りと言われても仕方ない状態です。クラウド・ファンディングで資金をつのって、若い研究者に再現実験をしてもらうのはいかがでしょう。科学の世界は仮説を出して実験で証明するか否定するかなので、揚げ足取りみたいな報道はつつしんで内容を問う報道をしてください。雑誌に投稿された論文は、必ずしも常に正しいとは限りません。常温核融合とかニュートリノの超光速度とか後で否定される「発見」もあります。仮説が仮説のまま放っておかれるのが一番の問題です。

2014年4月10日木曜日

事故対策訓練

学校や職場では定期的に火災の避難訓練をすると思います。これと同じく、原子力発電所でも定期的に過酷事故の対策をする訓練と避難訓練をする必要があります。全電源喪失を起こしてその対策を試験するとか、放射性物質が大量に漏れた事にして回りの住民の避難訓練をします。これは普段から定期的にやらないと意味がありません。福島原発事故では一号機の非常用復水器を動かした経験のある運転員がひとりもいなかったため、現場の人間は手遅れになるまで誰一人として非常用復水器が止まっている事に気づきませんでした。非常用復水器を動かす訓練は定期的にやるべきだったのにもかかわらず、安全神話のせいでやっていなかったのが原因です。もしそうした訓練が本物の原発では怖くてできないというなら、そもそもそうした原発を運転している事のほうが危険です。福島原発事故がもう日本の原発は安全ではないと証明した以上、原発を所有する会社は過酷事故への訓練を定期的に公開で行うよう法律で義務づける必要があります。避難訓練も実際にやらなければ本当の問題は見えてきません。

2014年4月1日火曜日

50歳定年制

日本では年齢による就職差別が合法なので、それを逆手にとって定年を50歳にする事を提案します。その目的は年功序列の打破です。75歳まで働くとすれば50年以上働く人が普通になるので、その50年を半分で区切って前期と後期に分けます。50歳まで勤める会社は前期の会社です。そこでは50歳になったら例外なく退社させます。その後50歳以上75歳まで働ける会社を後期の会社として設立します。50歳になったら後期の会社に入って新入社員となる仕組みです。人は50歳を越えると保守的になるので、後期の会社は変化の少ない仕事向きです。それに対して前期の会社は若い人中心の変化の多い仕事に向きます。人を50歳で分けて年齢と収入の関係を一度断ち切るので、後期の会社でも人件費を押さえる事ができます。50歳で別の会社に入って高い給料を得るには、それまで前期の会社で相当な結果を出さなければなりません。このため日本経済の活力がグンと上がること間違いなしです。もちろんこれは冗談です。

2014年3月21日金曜日

マクロ経済

著名なマクロ経済学者であるセルジオ・レベロ氏の話を聞く機会がありました。彼の意見では、アメリカの経済に関して中間所得層がどんどん減っている事が問題で、その解決策は大学卒業生を増やす事だと言っていました。中間所得層とは、工場で働く工員さんや会社で働く事務職の人たちのことです。こうした仕事は海外に移ったかコンピュータがやるようになったので、残ったのは賃金が安くて海外にも動かせない「宅配の仕事」や「レジの仕事」などです。特別な資格や技能が要らないので、移民でもすぐに働ける仕事でもあります。アメリカの失業率が下がったのは、適当な仕事がないため仕事を探すのをあきらめた人が多いからで、仕事の数が増えたからではないとも指摘しています。日本はアメリカの真似をして2013年から市場に資金を供給する量的緩和策を取りました。人口が増えているアメリカの問題は貧富の差の増大です。日本もこれから中間所得層が減り貧富の差が増大するとマサは予想します。高額商品と低額商品が売れて、その間の商品は売り上げが減少します。両者を合わせた売り上げは、ほぼ横ばいというのがマサの予想です。人口が減る国で売り上げは増大しません。デフレもインフレも結果であって原因ではないので、人口減少という原因を無視して量的緩和策を取っても一時的に不動産のミニバブルが生じるだけです。「ない袖は振れない」のであって、日本の景気悪化に歯止めはかからず、国債の額が増えるだけに終わると予想します。人口を増やせないのであれば、一人当たりの稼ぎを増やすしか手がありません。つまり国内産業に従事する人の生産性が上がらなければ、日本は中国などの新興国に負け続けるでしょう。機械化することで生産性を上げると、失業者を増やすのでさらに貧富の差が増大します。経済格差を容認して金持ちを増やすのか、それもと全員が等しく慎ましい生活をする国になるのか、どちらがお好みですか。

2014年3月14日金曜日

賃上げ率は?

このところ日本の新聞はベースアップの話題で盛り上がっています。もともと低賃金で有名な電機大手は月額2千円で決着とか。アベノミクスの根本はインフレと賃上げなので、とりあえず正社員の月給が上がるのは良い事です。問題は4月から消費税が3%上乗せされる事で、賃上げはこれを上回る割合でないと実質賃下げとなります。月額2千円は月給が20万円なら1%に相当します。つまりほとんどの正社員にとってこの額では実質賃下げです。この程度の額で妥結する労働組合も情けないし、実質賃下げとなる事を報じない新聞も勇気がありません。賃金が3%以上増えないと4月からの消費は減少します。おまけに派遣など非正社員にはこうした賃上げは期待できません。日本は低負担・中福祉の国なので消費税は今後もっと上げる必要があります。それなら賃上げの報道も額ではなく割合に焦点を当てるべきです。こうした的外れの報道を鵜呑みにしていると、大事な事実を見落としてしまいます。

2014年3月9日日曜日

夏時間

今日からアメリカの夏時間が始まりました。これは3月の第二日曜日から11月の第一土曜日まで続きます。「夏時間」というのは俗名で、正式には「Daylight Saving Time」と呼びます。3月だと北部の州では季節はまだ冬で、山には雪が降ります。同じく11月を夏と呼ぶのも違和感があるでしょう。夏時間を設ける目的は、日照時間が長い初夏から初秋までの期間に1時間早起きして、暗くなるまでの時間を1時間延ばしましょうという事です。つまり仕事が終わってもまだ十分明るいので、涼しくなる夕方の時間で街歩きやスポーツができます。長い昼間の時間をより有効に使う事で、仕事以外に使う時間が増えて経済にも好影響があります。ところが、この制度が効果を発揮するにはひとつの大事な条件があります。それは仕事に人を付ける社会であるという事です。つまり自分の仕事時間は完全に自分で決める事ができ、となりの人がまだ働いていても自分の仕事が終わればさっさと帰宅できるという社会です。夏時間ではまだ外が明るいうちに退社できるので、アメリカのように仕事に人を付ける方式でないとうまくいきません。日本では人に仕事を付けるのが普通なので、手のあいている人は他の人の仕事までやる必要があります。こうした社会では、全員がその日の仕事を終えるまで誰も帰宅できません。まだ働いている人を尻目にさっさと自分だけ退社すると「あいつは身勝手なやつだ」という評判がたってしまいます。その結果みな他人の目を気にして暗くなるまで帰宅しないので、労働時間が1時間延びてしまいます。これが戦後日本で夏時間の導入に失敗した理由です。

2014年3月6日木曜日

法人の責任

福島第一原発事故が明らかにしたのは、原発の過酷事故は一度起きてしまうと民間の事業者では手に負えないという事実です。東電だけでは事故の収束も補償もできません。それに日本の法律では奇妙なことに、天災により引き起こされた原発事故では誰も責任を取らなくていい決まりになっているので、そうした事故の被害者は泣き寝入りするしかありません。次に3・11のような大地震がもし日本海側で起きれば、風は西から東に吹くので、その結果起きる原発事故の規模は福島を軽く越えてしまいます。能登半島の原発が爆発すれば放射性物質で東京が汚染されます。千年に一度の天災まで想定して対策を立てる必要があるのに、恣意的に想定の範囲を狭めて原発の発電コストを見かけ上安くしています。でもそうした甘い想定をした人の責任が問われないのは納得できません。想定外と言う以上、その想定で良いと判断した人が会社にいるはずで、そうした誤った判断に対する罪を問うべきです。そのためには社長や会長という個人ではなく、法人の責任を問う法律を立法する必要があります。原因に関わらず事故を起こすと会社が大損してしまうという仕組みを作らないと、また同じような甘い想定の隙を突いて日本で原発の過酷事故が起きるでしょう。日本で原発を使い始めてからまだ40年しか経っていないのに、3機もの原子炉が大破しました。もしまた日本の原発を全部動かせば、次の10年の間に福島原発事故のような過酷事故が再び1回起きる計算です。あれほど広告で安全を自慢していた日本の原発は、今や世界で最も事故確率の高い欠陥商品となりました。

2014年3月1日土曜日

不文律

法律や条例として明文化されていない決まりが多い文化を高文脈文化 (high-context culture) といいます。日本は不文律が多いので、高文脈文化を持つ国です。その反対にアメリカは低文脈文化の国です。不文律がほとんどなく、法律や条例に書いてない事はやってもいい事になっています。例えばエスカレーターに乗る時、片側に寄って反対側を空けるというのは日本に特有の不文律です。アメリカにこのような「常識」はありません。電車やバスの中は静かに過ごすというのも日本の不文律です。これを破るのは「常識」のない外国人か酔っぱらいです。年上には敬語を使うのも不文律です。不文律は経験して覚えるので、外国人が日本の不文律を理解するには何年もかかります。その逆にアメリカは法律や条例で「やってはいけない事」が列挙されているので、外国人がアメリカの常識を学ぶのは簡単です。日本は聞き手が「行間を読む」必要があり、アメリカは話し手が「言葉を尽くす」必要があります。歴史の長い国ほど不文律が多いとは限らず、ドイツなど歴史の長い国でも低文脈文化を持つ国があります。

2014年2月10日月曜日

度胸のもと

オリンピックのような技術だけでなく度胸が問われる場になると、日本の選手は実力を出せずに外国の選手に負けています。それはなぜでしょうか。アメリカと較べると、日本は失敗したり負けたりした選手への風当たりが強いように思います。一番悔しいのは本人です。選手に「失敗したらどうしよう」と思わせてはいけません。試合であがらないために、選手は普段から成功した姿をイメージする練習をしています。また同時に試合を「楽しむ」ことを求められています。十分に練習して実力を出せれば、その姿はメダルが取れなくても賞賛に値します。オリンピック選手になった事のない人が、あれこれ選手を批判するのは余計なお世話です。ましてや選手の服装を問題にしたり、試合後のコメントに文句を付ける人には「それならオマエが試合に出てみろ」と言いたくなります。日本には「失敗は成功のもと」という良い諺があるじゃないですか。まわりの人の真心の応援が度胸のもとです。

2014年2月9日日曜日

職員室

アメリカの公立学校には職員室がありません。正確に言うと教員が机を並べて集まる部屋がありません。アメリカの職員室には事務職の人がいるだけで、教員はそれぞれ自分の担当の教室に机を持っています。だからどの教室にもその隅に教員専用の机があり、そこに教員のカバンなどが置いてあります。その教室に子供がいる限り教員は帰宅することができません。中に誰もいないのを確認してから教員はカギをかけて帰宅します。体育のように教室を使わない教員はどうするのかと言うと、体育館の端にある小部屋に自分の机を置いています。どの教員もパソコンを使って仕事するので机が必要です。体育館も使っていない時はカギをかけています。アメリカの公立学校は、法律によって納税者がいつでも敷地内に入れるように塀がなかったり門にカギをかけていないので、かわりに教室にカギをかけます。生徒は毎朝担当の教員がカギを開けるまで、教室の外で待っています。日本のように休み時間に教員が職員室に戻ってしまうと、その間に教室で起きているイジメに気がつきません。日本の教育システムはアメリカのものを輸入したはずなので、職員室に職員ではない教員がいるというのも考えてみれば不思議な話です。

2014年2月5日水曜日

原発と心中?

あまり政治的な事は書かないブログのつもりなので、短く書きます。もう二度と日本で福島原発のような事故は起きないと、根拠もなく信じている政治家が多いのには驚きます。どんな安全基準を作っても、その想定を越える災害は必ずやってきます。福島原発だって当時の安全基準を満たしていたのに、「千年に一度」の地震とその津波で「想定外」の電源喪失が起きて大量の放射性物質をまき散らしました。もし「千年に一度」の災害まで「想定内」にすると、911テロのように飛行機が原子炉にぶつかる事や、去年のロシアのように大きな隕石が落ちてきて原子炉にぶつかる事まで想定しなければいけません。ところがそこまで考えて原発を補強すると、原発で発電する電気の値段が高くなりすぎるので、今の安全基準では考慮していません。つまり恣意的な「想定内」の範囲での安全基準なので、そんな甘い基準を満たしているだけではまた事故は起きます。安全基準を満たしているという事は、重大事故が起きないという意味ではありません。原発を続ければ重大事故は必ずまた起きるし、そうなれば当事者は再び「想定外の事故だった」と言い訳します。本当に日本人は原発と心中したいんですか?

2014年2月1日土曜日

イルカ問題

困った問題です。日本の政治家は完全にこの問題を読み違えています。イルカ問題は感情的なものなので、理屈で反論しても話が噛み合っていません。日本のイルカ漁に反対しているのはアメリカだけです。それはアメリカ人にとってイルカは犬や猫と同じペットだからです。「Flipper」という有名なテレビドラマのおかげで、イルカはアメリカ人にとって愛すべき動物になってます。人に害のない、かわいいイルカをどうして殺して食べるのかというのがアメリカ人の疑問で、日本の政治家はこの質問に答えていません。「日本の文化であり、生活のため」と理屈で答えても、では「なぜ他の漁では生活できないのか、なぜ文化を変えられないのか」という次の質問に答えていません。イルカを食べているのはごく一部の日本人だけなのに、こうした問題で日本人全体が野蛮人のように思われるのは日本にとって損です。アメリカは日本以上に世論に敏感な国です。アメリカの世論が「日本人は野蛮なので懲らしめるべし」となると、大統領でもそれに逆らうことはできません。イルカやクジラを食べなくても現代の日本人はタンパク質に不足しません。かつて江戸時代には日本人は犬を食べていました。今の日本で犬を食べる人はいませんよね。

2014年1月25日土曜日

ブログ本その2

読者の皆様からいただいた励ましのおかげで、このブログから第2のキンドル本を出すことができました。前著に較べるとぐっと身近な日米の違いを話題にしています。シリコン・バレーに住んで25年になるマサが見つけた本当の話がいっぱいです。加筆修正してあるので、ブログより読みやすくなっています。お求めは下記のリンクをご覧下さい。

http://www.amazon.co.jp/dp/B00I1PUHFE

2014年1月18日土曜日

部分最適と全体最適

かつてマサの勤めていた日本の会社にはQC活動というものがあって、どの部署も仕事の改善方法を模索していました。良くあるのが自分の仕事を他の部署に回すというアイデアで、自分の部署はそれで仕事が減って表彰されるけど、仕事を押し付けられた部署は不満たらたらです。例えば仮に、仕事で使う文房具は事務所の中で複数の決まった場所にあり、定期的に庶務の人が巡回して足りないものを補充するという決まりだとしましょう。ところがQC活動として、足りなくなった事に気づいた人が庶務に取りに来るという方法に変えるとします。すると確かに庶務の仕事は減りますが、回りの人の仕事は増えます。おまけにいちいち取りに行くのが面倒とか、定時を過ぎると庶務の人がいないなどの問題もあり、必要な文房具が必要な時に使えないという不都合まで起きます。つまり全体としてこれは改悪です。部分的には仕事が減ったように見えても、そうした部分最適だけ集めても全体最適にはならないのが普通です。同様に国として見れば、日本中に高速道路を作ったのに、その通行料金が高いため十分に使われないのはお金のムダです。立派な道路を作るのも、また道路の利用者から通行料金を取るのも、ともに部分最適の例です。でもせっかく作った道路が使われないまま朽ちて行くとしたら、それは全体最適にはなっていません。この場合の全体最適は、そうした高速道路の通行料金を無料にした上で、道路の建設費はガソリン税や軽油税に含めるというものです。車は高速道路の方が燃費が良いので、同じ距離を走るなら高速道路を使う方が温暖化防止にもなります。さらに高速道路を使わない人は、LPガスや電気で走る車を使えば余分な税金はかかりません。

2014年1月11日土曜日

花見酒の日本

落語の「花見酒」は、ふたりの酒飲みが売り物の酒をお互いに相手から買っているうちに、酒樽を空にしてしまうという話です。手元に残るのは1貫という酒一杯分のお金だけで、酒を売り切ったのに儲けがないのはどうしてだろうと、二人の酒飲みは酔った頭をひねります。この落語は以前にオイルショック前の日本経済を表す話だと本にもなりました。たしかに土地ころがしのようなバブル経済に似た所があります。でも自分の資本を食いつぶしてしまうという意味では、今の財政赤字の日本にピッタリの話です。日本人は日本人に一人あたり1000万円の借金をして飲み食いしています。つまり銀行に預けたはずの貯金はもう他の誰がか使ってしまいました。ところが日本はまだ債務超過にはなっていないと政府は言っています。これは政府の持つアメリカ国債やJTおよびNTTなどの株式会社の株、さらに国宝や国有地を売れば借金はすべて返せるという意味です。では誰がそれを買うのでしょうか。日本国民にはもう余分なお金がありません。すると裕福な中国人に売るのでしょうか。1990年のバブルとその後の20年で、日本は昭和の時代に貯めた資本を食いつぶしてしまいました。「花見酒」と同じく金庫の中には現金の代わりに国債の紙があるだけです。収入の倍の支出を続けるのには限度があり、このツケは国民が支払わなければなりません。なぜなら民主主義では国民が最終責任を負うからです。政治家も官僚もこのツケは払ってくれません。彼らにできるのはこのツケを次世代に先送りする事だけです。まだ生まれていない、選挙権もない未来の日本人に借金を押し付けているのが今の日本のオトナです。

2014年1月4日土曜日

スタート・アップだけじゃない

シリコン・バレーはスタート・アップ企業で有名です。でもシリコン・バレーでスタート・アップ企業に勤める人は実はごく僅かで、IPOを経て大会社となったヤフー、アップル、グーグルなどの様にスタート・アップでない会社に勤めている人が大部分です。昔からあるシスコ、HP、インテルなども含めれば、シリコン・バレーの中でスタート・アップ企業に勤める人は1%もいないでしょう。それにここにあるのはハイテク企業だけではありません。スーパーもあれば病院もあります。塾もあれば老人ホームもあります。シリコン・バレーでも大部分の人は安定した会社に勤めているのが現実です。お金に困らない人や身軽な若者以外は、健康保険と子供の教育にお金がかかるのでスタート・アップでは働きません。家も高いので住宅ローンを組んでいる人はほぼ全員が共働きです。スタート・アップ企業には、独身の若者やお金に困らない投資家が必要なのです。