2012年1月29日日曜日

福島原発事故三つの幸運

あまりマスコミは報じていませんが、福島原発事故には三つの幸運がありました。この幸運が無かったら、もっとひどい放射能汚染を引き起こしていたところでした。国が最近まで公表していなかった最悪のシナリオは、実はこうした幸運によって防がれたものです。まず最初は4号機の燃料プールの水です。ここには使用済みだけでなく現役の燃料棒が大量に置かれており、アメリカ側が推定したように燃料プールの水は数日で蒸発して無くなるはずでした。すると燃料棒がむき出しのままメルトダウンして大量の放射性物質を放出します。東京まで避難地域になるシナリオでした。ところが4号機の水素爆発により原子炉ウェルの扉が開いて水が燃料プールに流れ込み、蒸発を防止しました。これが最大の幸運です。次は2号機の原子炉建屋です。2号機も4号機と同じく水素爆発するはずでした。ところが3号機(または1号機)の爆発により2号機の原子炉建屋が変形し、圧力を逃がすためのブローアウトパネルが脱落しました。この結果水素が建屋に溜まることなく、2号機の爆発は起きませんでした。そして最後の幸運は、度重なる水素爆発にも関わらず死者が無かったことです。特に3号機の爆発は強烈でしたので、落ちて来るコンクリート片がすぐ側にいた自衛隊員に当たれば間違いなく死んでいました。けが人だけで済んだのは幸運としが言いようがありません。今回の事故により、燃料プールはひとたび冷却が止まると、むき出しの炉心と同じくらい危険になる事が分かりました。燃料プールは格納容器の外にあるので、これが崩壊すると放射能を遮るものはありません。チェルノブイリ級の大惨事になるところでした。これは今までの原子力事故対策の盲点であり、日本の原子炉すべてに共通する弱点です。

2012年1月28日土曜日

ゆとり教育

先生にゆとりが無いと、生徒にもゆとりがありません。その意味で週休二日にしたのは良かったのですが、授業時間が減った分をどこかで取り戻す必要がありました。落ちこぼれをなくすという目標もそれ自身に罪はありません。でもその手段として教育内容を減らすという行動は誤りでした。落ちこぼれをなくすには、全員の底上げをするか、基準を下げるかのどちらかの方法があります。日本の文科省が取った方法は、基準を下げるという方法でした。社会に役立つ人間を育てるのが教育の目的です。日本の公立教育は安かろう悪かろうとなっています。GDP比で日本の公立教育費は、OECD諸国のうちギリシャに次いで下から2番目です。先生ひとりが受け持つ生徒の数が多すぎます。ゆとり教育は社会に役立つ人間を育てるという目的に照らして誤りであり、本当は先生の数を倍にして学校行事を半分に減らすべきでした。入学式は要りません。授業時間は減らすより増やすことが必要なので、夏休みを短くします。学校には冷房を入れます。国際競争力のある日本人を一人でも増やすには、教育に投資するのが一番です。ゆとり教育でいう「生きる力」とは何でしょうか。それは客観的に数字で表せるものでしょうか。文科省の自己満足で終わらせないために、「生きる力」は国際比較可能な数字で表す必要があります。教育とは税金を使う投資ですから、その結果リターンがいくらかを納税者である国民は厳しく見つめるべきです。マサに言わせれば「生きる力」とは「日本人として生き残る力」であり、国際競争力そのものです。ゆとり教育はまさにその「生きる力」を日本から奪った政策でした。

2012年1月19日木曜日

教育産業の行方

今の日本には実は教育産業が大きく伸びる余地があります。既存の学校が社会の要求に満たない学生を送り出すので、社会人は自分で必要な勉強をしなければなりません。英会話学校や各種の資格取得講座など花盛りです。どうしてこうした資格を高校や大学などで取れないのでしょうか。半年や1年で取れる資格だったら学校の中でも取れそうに思います。こうした資格が実は物の役に立たないからでしょうか。社会の役に立つ人材を送り出すのが学校の役割ですよね。求める人材と学校が送り出す人材のギャップが大きいと、社会人になってからお金と時間をかけて再び教育を受ける必要があり、これは社会的な損失になります。もちろん社会に出てから学生に戻るのは経済的に可能なら良い事ですし、働きながらの社会人教育を否定するつもりはありません。問題は新卒の学生が社会の要求をどれだけ満たしているかです。日本の大学などの学校は普段あまり国際競争力を問われることがありません。日本人はほとんど日本で暮らしますので、外国の学校に学生を取られるという問題がないからです。ところが企業は国際競争の中にいるので、国際競争力のある人材を求めます。その結果日本にいる外国人留学生がもてはやされ、日本の学生は割を食うことになります。国際競争力のある人材を養成するには、学校そのものが国際競争力を身につける必要があります。英会話学校や各種の資格取得講座が人気なのは、日本の学校が社会の要求を満たしていない証拠のように思えます。日本でしか通用しない資格に国際競争力はありません。日本からアメリカに留学する学生の数も円高なのに減っています。ゆとり教育の弊害でしょうか。

2012年1月17日火曜日

国際競争力

国際競争力とは何でしょうか。日本が他国と競争する分野は経済、科学、文化、スポーツ、軍事力などがあります。経済の国際競争力は経常収支に現れます。物とサービス、投資とそのリターンを含めて黒字か赤字かという数字です。日本は外国から食料とエネルギーを買わねばなりませんので、その分の外貨を常に手に入れる必要があります。科学での国際競争力は特許の数やノーベル賞の数などに現れ、これも経済の国際競争力に影響します。たとえば特許が多いほどそのライセンス料で外貨を稼ぐ事も可能です。文化の国際競争力は直接数字では表現できませんが、間接的には観光や映画などの娯楽産業に現れます。スポーツの国際競争力はオリンピックのメダルの数やワールドカップでの順位に現れ、これも間接的に経済に影響します。軍事力は国と国とが対立した時に政治力の差となって現れます。政治は経済に大きく影響しますので、軍事力も経済にプラスとマイナスの両方の影響を持ちます。日本が国際競争力を発揮したいのはまず経済分野です。ところが経済には科学、文化、スポーツ、軍事力が影響します。日本は憲法で軍隊を禁止したので、とりあえず軍事力は大きくありません。それ以外の日本の経済、科学、文化、スポーツの国際競争力はどうでしょうか。文化とスポーツはまあまあ。科学と経済は低下傾向です。日本の経常収支は黒字が減少しています。円高に加えてアジア諸国との競争により輸出が減少し、原油高とエネルギーの輸入増加で外国への支払いは増えています。この傾向は少なくともあと10年は続くでしょう。人口減少の日本が生き残るには、国際競争力という視点が欠かせません。日本の教育の目的は、ひとつには外貨を稼ぐ人間を育てることです。これを否定しては将来の日本は成り立ちません。観光でもゲームでも方法は何でもいいから、外貨を稼ぐ能力が国際競争力です。

2012年1月14日土曜日

アメリカの大学入試

アメリカの大学入試は長い期間をかけて行います。まず高校が4年制なので、高校3年生の時にSATというテストを受けます。これは日本の共通一時試験にあたり、College Boardという団体に受験料を払って受けるテストです。ただしこれはいつ受けても良く、何度でも受けられます。インターネットから申し込みができ、近くの高校で土曜日に受けられます。点数は本人に通知され、希望の大学にはこのテストの一番高い点数が送られます。SATの科目には英語(国語)と数学の他に選択科目として理科や外国語などがあります。大学毎にどの選択科目の点数が必要かが少し違います。外国語の場合はリスニングに持参のCDプレーヤーを使います。数学だと電卓の持ち込みが許されており、高校ではグラフを描ける電卓の使い方を学びます。これを高校の2年ないし3年で受けます。SATの他にはACTという同様のテストもあって、ほとんどの大学はどちらの点数も受け付けます。点数は正規化されていて、いつ受けても同じ学力なら同じ点数になります。大学は9月入学なので、その前年の10月から12月にかけて希望の大学に願書を送ります。これもほとんどインターネットからできます。SATの点数の他に、自分を売り込むためのエッセイを書いて大学に送ります。これはワードファイルが普通です。このエッセイが面接試験の代わりになります。また、その時点での高校の成績も送ります。成績は再度高校が終わってから最終的なものを大学に送るので、卒業するまで手は抜けません。さらに受験生の周りの先生やボランティア先の大人の人三名に推薦状を書いて大学に送ってもらいます。また学校によっては、書類審査で絞り込んでから本人を大学に呼んで面接試験や実技試験をする事もあります。合否が分かるのは1月から3月ぐらいになります。いずれにしても、日本と違って年に一回のテストですべてを決めるシステムにはなっていません。

2012年1月4日水曜日

守りに入るな

スティーブ・ジョブスのスピーチにある「Stay hungry, stay foolish」は、成功したお金持ちの子供が多いスタンフォード大学の卒業生に向けて語られたキーワードです。マサはこれが「守りに入るな」という意味だと解釈しています。会社が若いうちは従業員も若いので攻撃的な経営ができます。でも何十年も経つと経営層が年を取り、自然と守りに入るので株価が停滞します。アメリカの場合こうなると株主が外部から(しがらみの無い)新しい経営者を連れてきて経営改革します。日本だと日産自動車のゴーン氏がこれに当たります。先輩の仕事を簡単に否定できない日本の組織では、成功の罠にハマる会社がアメリカよりも多いと危惧しています。日本という国自身がいまだに製造業にこだわるのも成功の罠です。かつてサン・マイクロシステムズという会社がシリコンバレーにありました。今のFacebookみたいに大学生憧れの会社で、マサのいたHPとはライバル関係にあった会社です。でもいつのまにか業績を落とし、2009年にオラクルに買収されました。HPも同じく縮小傾向にあり、外部から新しい経営者を連れてきました。こうしたハードウェアの会社はもはやシリコンバレーの中心ではありません。そんな中でアップルはほぼ唯一の例外もしくは生き残りです。マックの成功で守りに入ったアップルも、業績低迷のあと外部から(再び)スティーブ・ジョブスを連れてきて成功しました。日本の会社も守りに入ると、海外の会社から経営者を送り込まれるようになるでしょう。「守りに入るな」は今の日本に向けて送りたいメッセージです。

2012年1月2日月曜日

福島原発の欠陥

マサは一応エンジニアなので、福島第一原発の設計上の問題点を調べてみました。

1 電源が無くても炉心やプールを冷却できるシステムが無かった(フェイルセーフの欠如)
2 非常用発電機とバックアップ電池が同じ場所、しかも地下にあった(津波や浸水に弱い)
3 ベントしたため原子炉建屋に水素ガスがたまり、ガス爆発を起こした(ベント系の欠陥)

サブシステムとして非常用復水器IC、原子炉隔離時冷却系RCIC、高圧注水系HPCIなどを持っていましたが、いずれもバックアップ電池が使えなくなった時点で停止しています。それぞれのサブシステムが電源喪失で停止するのはフェイルセーフとして正しいことです。しかし全体としてみるとこれはフェイルセーフになっていません。スクラムにより停止した炉心には大量の発熱があり、これを一切の電源なしに冷やすサブシステムが欠けていました。設計上の欠陥です。

非常用発電機は冷却のため海水を必要とします。さらにタービン建屋の地下に置かれていた発電機は、海水の浸水で使えなくなりました。他の場所にあっても、冷却用海水ポンプが止まったため空冷式でないものは使えなくなりました。さらにタービン建屋の地下にはバックアップ電池と配電盤があり、これらも水没したため使えなくなりました。照明や計器用電源すら失いました。設計上の欠陥です。

格納容器からベントで排出した水素ガスが、電源がないため開いていたパイプを通って原子炉建屋に逆流しガス爆発を起こしたのは、明らかにベント系の設計上の欠陥です。フェイルセーフとして、電源喪失時に逆流を防ぐため原子炉建屋につながる弁は自動的に閉まるべきです。あるいは、別々の排気塔を設けるべきです。1号機と2号機、3号機と4号機の排気塔が共通なのも欠陥です。

これら設計上の欠陥は福島第一以外の原発にも共通するものであり、ひとことで言えば全電源喪失を考慮していないということです。その対策なしに原発の運転を続けることは大変危険だと分かりました。日本のすべての原発はこの欠陥をかかえており、それでは炉心溶融事故が起きると実証されたので、いま日本の原発をすべて止めることが国民のためになるとマサは考えます。原発はもはや安いエネルギー源ではありません。

2012年1月1日日曜日

サービス業

日本でサービス業というと、安っぽい産業のイメージがありませんか。「サービス」が「無料」という意味に使われているので、こうした誤解が生じるのでしょう。サービス業とは第3次産業のことです。農業や漁業、鉱業や林業など直接自然の恵みを収穫するのが第1次産業、それらを加工して製品にするのが製造業である第2次産業、それ以外の産業全部が第3次産業です。金額的には第3次産業が一番大きいと言えるでしょう。アメリカは農業国でもあり、ガスや石油など地下資源もあるので第1次産業が発達しています。製造業は日本に押されてるものの、車や飛行機、兵器やハイテク機器に強みがあります。それ以外の観光、教育、映画、金融、保険、医療、IT産業、通信、運送など第3次産業も活発です。日本は土地が狭く地下資源もないので、第1次産業は国内需要すら満たしていません。第2次産業も円高とアジアの追い上げにより縮小傾向です。残るは第3次産業です。ここで誤解して欲しくないのは、第3次産業はサービス業だから利益が少ないとか、小売りや介護だけかと思ってしまう点です。第3次産業には観光、教育、映画、金融、保険、医療、IT産業、通信、運送などが入ります。これらはすべて体より頭を使う産業です。日本の産業が進む方向は第3次産業であり、こうした産業で他の国に勝てるような国際競争力のある人材が日本の将来には欠かせません。日本は閉鎖的なので海外からの移民は成功せず、人口の減少も続きます。国民ひとりひとりの能力を高める以外に、日本の没落を免れる道はないとマサは考えます。