2010年11月13日土曜日

人口減少下の経済

日本は人口が減少している数少ない先進国のひとつです。今までの経済学は過去の事例から組み立てられているため、国の人口は増加するというのが暗黙の前提でした。そのため物価は時間とともに上昇し、国の借金はインフレ率を考慮するとそれほど大きな問題でもないと思われていました。日本の国内財政赤字は1990年のバブル崩壊からずっと増加を続け、最近ではもはや自律できない規模まで膨れ上がっています。収入の倍の支出を抱えた国は日本の他にありません。人口が減少する国では従来の経済学は通じません。人口が減少するということは需要が少なくなるということですから、自然とデフレになります。インフレを前提とした借金は逆に自分の首を締める行為となります。景気刺激策として道路や橋を作るのも間違いです。なぜならこうした物は時間とともに使われなくなる一方、保守費用が増えて新しい施設を作る資金が足りなくなるからです。人口減少下での投資先はまず第一に人です。より少なくなる国民の一人一人により多くの富を生んでもらうためには、それぞれへの教育を増やすのが必要です。具体的には、教師の数を増やしてクラスあたりの生徒数を半減し、親の収入と学生の成績を考慮した給付型の奨学金を増やし、失職した大人が大学や大学院で再度学べるように補助金を出すのが税金を生かす道となります。こうした施策は即効性がないので今まで日本はやってきませんでしたが、そのため日本の経済力はますます低下し、国内財政赤字はギネス級になってしまいました。日本の資源は人しかありませんから、そこに投資しなければますますアメリカとの差が開きます。グローバル経済においては世界レベルで戦える人材を多く持った国が勝ちます。国力を超えた過度な福祉を削って、教育に税金を使うべき時です。

2010年11月9日火曜日

報道の役割

アメリカや日本のような資本主義社会には、独占禁止法という法律があります。ひとつの会社が強くなりすぎて公平な競争が行われないようになると、消費者が被害を受けるということから設けられた法律です。実際これによりアメリカのAT&Tという電話会社は分割されましたし、IBMも分割されそうになりました。資本主義がもつ欠陥を法律で防止しているのです。同じように民主主義にも情報の独占禁止法が必要です。これは政府が持つ情報を積極的に公開させるものです。民主主義がうまく働くためには、国民に大切な情報が公開されていなければ判断できません。政治家は国民の代表として国会で判断を下しますが、すべてを任せているわけではありません。今回の尖閣諸島のビデオは、最初に国民に公開されるべきものでした。日本と中国がどのような関係にあるのか、海の上の国境ではなにが起きているのか国民には知る権利があります。こうした大事な情報を政府が国民の目から隠してしまうことは背任に相当します。人間は神様ではないので、権力というものはそのままでは腐敗するものです。民主主義においてその腐敗を防ぐものは情報の公開であり、それを国民に伝える報道の役割とは、時の政府を国民に代わって監視するというものです。民主主義はタダでは維持できません。自由な報道は民主主義に必要なコストです。このため利用者から購読料をもらって、広告主から独立した立場で報道できる新聞社やNHKのような放送局が必要なのです。国民の知る権利は政府といえども簡単に制限することはできません。政府が自分に不利な情報をあえて公開するには、法律による強制力が必要となります。国家公務員といえどもまず国民であり、国民の知る権利を政府が封殺する事は国家による情報統制とおなじで、これはまさに中国政府がやっていることです。日本が自由な民主国家というなら、こうした政府による情報統制はやめるべきでしょう。

2010年11月7日日曜日

高速道路無料化ふたたび

最近あまり話題にならなくなった高速道路無料化。日本の世論としては賛成派は少数のようです。これはなぜでしょうか。高速道路の無料化は物流コストの低下をもたらします。また高速道路の出入り口を増やせるので、特に地方経済に好影響を与えます。物流コストが高いと、大都市などの消費地から離れた産業は農業にしろ漁業にしろ圧倒的に不利です。日本の経済を考えた場合、高速道路の無料化は全体としてみてプラスが大きいとマサは信じています。インターネットも初期は従量制で、人々はなるべく接続時間が短くなるような使い方をしていました。定額制になって初めてインターネットは普及し、全国どこでも商品のお取り寄せが可能になりました。高速道路も同じです。無料化することで遠出をする旅行者が増え、競合する交通機関は料金を下げざるを得なくなります。せっかく作った道路ならば、より使ってもらえるようにすべきです。道路に投資しておきながら、わざと使いにくくするのは投資の無駄です。日本の経済を地方から立て直す起爆剤として、高速道路の無料化が必要だと考えます。CO2の増加はより燃費の良い車が増えたことで相殺されますし、同じ距離を走るなら高速道路の方が燃費が良いのは事実です。料金を利用者負担と言うなら、今の日本でトラックによる物流に直接または間接的に依存していない人は皆無です。まさに産業の動脈が高速道路なのに、わざわざその血流を流れにくくする制度を維持するのは不合理です。景気浮揚のために公共事業に税金を使うくらいなら、そのお金で高速道路を無料化したほうがよっぽど国民のためになります。試しに5年間すべての高速道路を無料化し、経済がどう変わるか調べたらどうでしょうか。公共事業といえども投資ですから、投資が回収できないものに税金を使うのは「死に金」です。高速道路への過去の投資を「生き金」としなければ、日本の将来はありません。ちなみにアメリカの高速道路はすべて無料です。ほら、荒井由美の歌に「中央フリーウェイ」というのがあるでしょ。あのフリーウェイは本来無料道路という意味です。この歌のように、中央高速を無料化しましょう。