2011年8月14日日曜日

エノーラ・ゲイ

先日ワシントンDCに行き、アメリカに22年前に来て以来見たかったエノーラ・ゲイを見てきました。これはB29長距離爆撃機で、広島に原爆を落とした飛行機です。場所はワシントン郊外のヴァージニア州ダラス空港の隣で、そこはスミソニアン航空宇宙博物館の別館となっています。ちなみに本館はワシントンDCにあり、ライト兄弟の飛行機の実物が展示されています。この別館のエノーラ・ゲイはピカピカに磨き上げられていて、まるで新品同様の機体を格納庫の床から1メートルぐらいの高さの台に載せて展示してあります。また機体の前にはさりげなく兵士が立っていて機体を守っています。歴史上始めて広島で大量破壊兵器として使われ、兵士よりもはるかに多数の民間人を殺した原爆のことは、実はあまりアメリカでは知られていません。これはアメリカという国の負の部分であり、アポロ11号の月着陸が光ならは、原爆は陰の部分です。戦争ですからより多くの敵を殺すのが軍隊の目的ではありますが、非戦闘員である民間人をこれだけ多くしかも短期間に殺した例は他にありません。エノーラ・ゲイにはそうした政治的問題があるため、展示には「広島に原爆を落とした飛行機」であるとしか書かれていません。その原爆で広島に何が起きたかには一切触れていません。これはアメリカのタブーであり、その話題に触れることは社会的生命を危険にさらすことになります。じっさい航空宇宙博物館の館長は、このタブーに触れたために辞職に追い込まれています。日本人にとっての原爆と、アメリカの一般市民にとっての原爆では意味するところが全くちがいます。日本人は原爆の恐ろしさと戦争の悲惨さの両方を知る世界で唯一の国民です。他の国はアメリカ国民でさえ原爆の恐ろしさを知りません。原爆についてアメリカ人と語るときは、戦争の是非を問いましょう。アメリカによる原爆の使用を非難しても、日本は相手を後ろから銃で撃つような「卑怯な」国ですから、真珠湾の奇襲攻撃を持ち出してきて反論してきます。日本の反核運動は反戦運動としてのみ他の国の共感を得ることができるとマサは思います。

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