ヒトの免疫には自然免疫[^1]と獲得免疫があります。体内に入った異物に対して最初に働くのは自然免疫で、その後に働く抗体などは獲得免疫です。自然免疫の中心はT細胞という白血球で、これは骨髄で作られたのち胸腺で分化し、遺伝子の再構成によってランダムに変化します。T細胞はひとつひとつがたったひとつの抗原に反応するようにできており、ランダムに変化した結果、まだ見ぬ未知の病原菌にも反応するT細胞ができます。ところが逆に、遺伝子の組み合わせによっては自分自身に反応するT細胞も出来てしまうので、そうした有害なT細胞は胸腺の中で自死します。ランダムなので、自然免疫はヒトにより何に反応するかという個人差が大きいという事になります。遺伝子が似ている家族間でも同じ自然免疫を持つ事はなく、これがワクチン接種の副反応という問題を生みます。ワクチンには色々な物質が含まれており、大多数のヒトの自然免疫には無害でも、ごく少数のヒトの自然免疫には反応してしまう事があります。ワクチンの治験では数万人の参加者でテストするので、百万人にひとり位の稀な反応は見落としがちです。もし自然免疫がワクチンの成分に強く反応してしまうと、命を落とす事もあります。ワクチンで獲得免疫を得て特定の病気を免れる利点と、体の自然免疫が予想外の反応をする欠点を天秤にかけて、ワクチン接種をするかどうかを決める必要があり、新しいワクチンに対して懐疑的になる人がいるのは理解できます。ほとんどの副反応は医者が治療できる一方で、ごく少数の「治療できないケース」がある事も確かです。公衆衛生では大多数の健康を優先するので、認可されたワクチン接種は社会生活に必要とされています。戦後の日本で感染症が激減したのは子供へのワクチン接種が普及したためで、結核やハシカは過去の病気になりました。B型肝炎や小児麻痺、天然痘の流行もありません。自然免疫は感染症による人類全滅を防いできた反面、ワクチンの重篤な副反応の原因でもあり、その仕組みの理解は大切です。
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