2022年2月6日日曜日

成田空港検疫

成田空港の元検疫所所長が書いた本「成田空港検疫で何が起きていたのか─検証 新型コロナウイルスの水際対策」[^1]を読みました。新型コロナで検疫所は大変だと聞いていたので、その実態を現場にいた人から知るためです。上からの無理難題に現場が知恵を絞ってひとつひとつ解決していった様子が分かります。でも著者も指摘しているように、水際対策は病原体の国内への流入を防ぐのが目的ではなく、流入を遅らせる、つまり時間稼ぎをするのが目的です。デルタ株もオミクロン株も水際対策では流入を防止できず、国内の市中感染を起こしました。つまり水際対策が突破された段階で、同じ水際対策を続ける事の是非については何も記述がありません。もちろん首相や厚労省の大臣が決めた事を実行するのが所長の仕事なので、そこは上の人に言ってくれという事なのでしょう。第一防衛ラインが突破されたら、第二防衛ラインに第一防衛ラインのリソースを回すか、または第一防衛ラインを縮小するという判断もありだと思います。でもその判断は首相と大臣が行うので、この本では話題にしていません。検疫の目的が病原体の国内への流入を防ぐのであれば、デルタ株やオミクロン株の流入についての元検疫所長としての意見もあるかと期待したものの、それはありませんでした。日本の細かい検疫とアメリカのおおざっぱな検疫の両方を経験した人間としては、次のパンデミックに備えて空港検疫の目的と方法について国レベルでの見直しが必要だと思っています。費用対効果を無視した検疫は誰のためにもなりません。酷使される検疫所員も気の毒だし、ワクチン済みで検査結果陰性でもホテルに監禁される旅行者にとっては人権侵害となっています。

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