2021年11月15日月曜日

革新的イノベーション

この日経の記事[^1]では「革新的イノベーション」は(既存の)企業の業績に寄与しないとなっています。むしろ「漸進的イノベーション」の方が企業の成長に関係するそうで、納得できる内容です。なおアップルのiPhoneは「革新的イノベーション」ではありません。それまでにBREWというアプリ環境[^2]が走る携帯電話が既にあり、またBlackBerry[^3]というキーボード付きの携帯電話もありました。もう誰も覚えていないでしょうけど、その数年前にアップルが出したNewton[^4]というPDAが失敗し、アップルは会社として追い詰められていました。ところがソニーのWalkmanが大ヒットとなり、それにヒントを得てアップルがiPodを出しました。デジタル化された音楽をインターネット経由でiTune Storeから買うというビジネスモデルと、CDの音楽も取り込めるという操作性の良さから、iPodはWalkmanを駆逐してアップルの成長に貢献しました。この延長線上にiPhoneがあり、タッチスクリーンを使ってキーボードをなくした携帯電話として大ヒットしました。「革新的イノベーション」だったNewtonが失敗して、「漸進的イノベーション」だったiPodとiPhoneがアップルを大躍進させたのは事実です。それまでの世の中にないNewtonのような製品は、消費者にとって使う意味が分かりません。iPhoneはNewtonの持っていた機能まで取り込んで、まさに「利口な電話」(スマートフォン)として売れたのです。だから10歩先をいくような製品ではなく、1歩先を行くぐらいのイノベーションが(既存の)企業には必要です。テレビならスマートテレビ、掃除機ならルンバのようなスマート掃除機、いずれ自動車もスマートカーになるでしょう。「革新的イノベーション」で成功したのはSNSで、これはスタートアップに適した製品です。もし既存の企業が「革新的イノベーション」をやりたいなら、子会社を設立してそこに任せるのが一番です。

^1: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC26BP50W1A021C2000000/

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