この頃[^1]の日本企業を米国から見ていた筆者は、日本と米国の「成果主義」の違いに気付いていました。日本ではチームワークが成果に含まれないし、後輩の教育も成果に含まれません。もともと成果主義が普通だった米国では当たり前の事が、日本ではスッポリ抜け落ちていました。ジョブ型雇用が中心の米国では、成果主義以外に従業員の給料を決める要素はありません。ただし、その成果の定義には十分な時間をかけます。社長の方針が自分の階層にまで下がる頃には、特定のプロジェクトをいつまでにどの位の品質で完成させる、というような目標が決まります。同時にチームワークを促進する事や、後輩を教育する事、また必要に応じて優秀な新人を会社に誘う事や、あまり目立たないけど大事な仕事への貢献も成果に含めます。4半期毎のゴールには「このままやれば到達できるレベル」と「もう少し頑張れば到達できる次のレベル」が上司から提示され、従業員は話し合いの結果それに同意します。では横暴な上司にどう対処するかと言うと、ジョブ型雇用なので従業員には常に転職の道が開かれており、納得できない条件には退職を前提に交渉する事が普通です。転職も社内のケースが多く、ダメ上司ほど部下を失うという常識があります。つまり上司の成果には、どれだけ優秀な部下をキープできたかも含まれます。これはメンバーシップ型雇用にはない評価項目でしょう。成果が矮小化するのを防ぐのは上司の役目であり、手切れ金によるレイオフがない日本では成果の低い従業員を解雇することもできず、わざと低い成果を目標に選んで、上司の見かけ上の成果を維持するという方向に流れます。つまり成果主義とジョブ型雇用はセットであり、手切れ金によるレイオフを法律上許容しないと実現できないシステムです。この点はいまだに日本で広く理解されてはおらず、メンバーシップ型雇用の弊害(指示待ち)が足かせとなっています。
2025年02月08日追記
確かに成果主義では新卒が一番不利です。そのためアルバイトやインターンが重要になります。3ヵ月程度のインターンを必須科目とする大学も米国にはあります。そのかわり中途採用が活発で、年齢ではなく職業経験が問われます。個人の向上心を刺激するのが成果主義です。年齢差別となる定年はありません。