2015年4月28日火曜日

原発のコスト=数字のトリック

原子力発電は2030年時点で1キロワットアワー当たり10.1円以上という報道がありました[^1]。その前提は実にお粗末なものです。福島原発事故の結果、日本の原発が過酷事故を起こす確率は40年に一度です。その結果かかる事故処理費用もまだ確定していません。でもその費用を適当に見積もり、コストに含めたのが4年前の8.9円以上でした。今回の試算では、安全対策を強化したので事故確率は半分の80年に一度になるという仮定をしたそうです。そのため安全対策の費用と事故費用がコストを1.2円押し上げるという理屈です。まず事故確率が80年に一度という前提を受け入れるかどうかという国民的議論はないし、事故確率が半分になるという仮定も根拠があやふやです。こうしたいい加減な前提を明らかにせずに結果だけ10.1円(しかもこれは下限)という数字を流すのは報道機関として取材が不十分です。政府の出す報道資料を右から左に流すだけならインターネットで十分であり、お金を取る報道機関は要りません。アメリカやイギリスが計算すると原発のコストは16円と高くなります。どうしてこんな違いがあるのでしょう。日本は使用済み核燃料を再利用するという建前のため、これを処理する費用をわざと少なく見積もっています。ところがアメリカやイギリスは再処理せず廃棄するので、廃棄費用をコストに含めています。一方日本での使用済み核燃料の再処理は「もんじゅ」の事故をみれば分かるように失敗続きでコストの算定すらできません。政府が出す数字を見たら、その裏にある前提まで取材して報道するのがプロの仕事です。この下限の数字で原発が一番安価だというのは大間違いです。

^1: http://mainichi.jp/select/news/20150428k0000m020086000c.html

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