2023年10月16日月曜日

全銀システム

「全銀システム」[^1]は日本の銀行振り込みを司る、50年間無事故で動いてきた巨大なレガシーシステムです。一部の人に「クラシックカー」のようだと言われるこのシステムは、ほぼ8年おきに更新されて先日ついに事故を起こしました。なんでも「プログラムの設定ミスで部分的な容量不足が生じた」のが原因だそうで、「テストが不十分だった」という指摘もあります。でも筆者が注目したのは「中継コンピューターの更新に伴って、機器の基本ソフト(OS)が32ビットから64ビットに変更された」という点です。今頃ですか? IT業界はほぼ10年前にこの32ビットから64ビットへの移行を済ませています。NTTデータとあろうものが、もっと前に顧客を説得できなかったのでしょうか。32ビットの中継コンピュータが更新時期となり、64ビットのハードとOSに切り替えたのでソフトも64ビットに拡張して、メモリ容量の計算にミスがあったという事でしょう。エラーなど例外処理時にメモリを解放しないまま動き続けた可能性もあります。設計レビューやコードレビューで見つからない問題は、テストで見つけるしかありません。ところがテストには二流エンジニアが割り当てられる事が多く、時間も不十分なのがこの業界です。せめてまずインパクトの少ない銀行ひとつから始めて、数ヶ月かけて移行する銀行の数を増やしていくという展開方法を採れなかったのでしょうか。最初から処理数の多い銀行を12行も一度にやってしまうという計画には無理があったと思います。問題が起きてからもハードが更新時期なのでロールバックができず、ソフトの手数料チェックをやめる事で問題を回避するなど、テストだけではなく展開方法もプロらしくありません。


2023年10月17日追記
ハードは壊れる、コードにはバグがある、人は間違える、という前提が必要です。

2023年10月19日追記
「東京と大阪の拠点で同時にシステム更新を実施した。片方ずつやれば今回の事態は防げた可能性がある」。もしそうならシステム更新の基本を無視したという事になります。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。