2023年11月18日土曜日

好循環?

「輸入物価上昇による上振れを起点に、賃金も上がり物価もさらに上がるという好循環」[^1]が起きるかどうかが注目の的です。黒田元日銀総裁が目指したのは金融緩和による物価上昇で、それは2年どころか5年経っても起きませんでした。昭和の経済成長を再びという夢がこの好循環を期待する理由です。昭和の経済成長には円安と人口増加のふたつの助けがありました。当時は1ドル360円ですから大幅な円安です。人口増加もすさまじく、年率1%を越えていました。何もしなくても国内需要が増えるので、供給が追いつかず物価が上がり、機械化による生産性の向上で賃金も上がりました。輸出の競争相手は少なく、働く人は増えて財政も黒字で、今の日本とは真逆です。では令和の輸入物価上昇が賃金と物価の好循環を生むでしょうか。今のところ実質賃金はマイナスです。これは労働者の半分を占める非正規労働者の賃金が上昇不足だからです。人手不足にもかかわらず非正規労働者の賃金が上がらないのは、非正規労働者中心の労働組合がないからだと考えられます。また人口の3割を占める高齢者の収入は主に年金であり、年金は物価上昇率を下回る割合で増えるので実質年金もマイナスです。円安は輸出の助けになるものの、今の日本では物価高への悪影響も大きく、あまり経済成長への助けにはなりません。人口はもちろん減少しているので、これも助けにはなりません。残るのは生産性の向上と新たな売り込み先の開拓です。中国がダメなら他の新興国、例えばインドやアフリカに日本製品を買ってもらうという事です。生産性の向上には岩盤規制の撤廃が必要で、政府がやるべき事は山ほどあります。それでも「賃金も上がり物価もさらに上がるという好循環」は2050年までには再現しないというのが筆者の予想です。2050年は高齢化率が頭打ちになる年[^2]で、そこまで少子高齢化が続くというのが日本の人口問題です。

^1: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1460P0U3A111C2000000/

2023年12月08日
実質賃金のマイナスが19ヵ月続いています。10月の最低賃金引き上げでは不十分です。

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